眠れぬ夜にごそごそ、トン、トン、トン。
あぁ、また、だ。階段を上る音。
「すまない。また、起こしたか。」
申し訳なさそうに、見慣れた緑の髪から夜空みたいに綺麗な青い瞳が見つめてくる。
「大丈夫だよ。また、眠れないんだろ?」
毛布を持った彼は、小さく頷いて、ベッドの近くの床に体を横たえて、丸くなる。
煌めきの都市が戻ってからも、しばしば彼は自分の家に来てくれる。「風の曜日」は特にそうだ。
夜遅くまで家のことを手伝ってくれて、それから眠るのだけど、眠れない時はこうやって、自分のベッドの近くまで来て、眠るのだ。そうすると、朝まで眠れるらしい。
「なんで、俺、こんなに弱くなったのかな。」
一人で眠れない騎士なんて、情けないだろ。
目を伏せてつぶやく彼の姿は、以前なら自分の姫にも見せなかっただろうに。