アナタと トワに「渡したいものがあるんだ。」
ラズワルドが、彼らしからぬ神妙な面持ちで自分を呼び。
「多分、サイラスには必要になると思う。
カムイ様の時間は、僕達と、いや、多分、サイラスとも、みんなとも、違う。だから、これは、カムイ様と一緒に生きる決意をしたからこそ、必要なんだ。」
そう言って手渡されたのは、手のひら位の小瓶に入った赤い液体だった。
「これは?」
「神祖竜の血。誰から貰った、とかは言えないけど、本物だよ。竜脈を君も使えるようになる。でも、これを使う、って事は少なくとも「普通の人間じゃなくなる」から。化け物とか、じゃなくって。だから、本当によく考えて使ってね。」
「カムイと同じ時間を生きるために、か。」
「ああ。」
そのあと。一緒のベッドにいるのに、眠れないのを気づかれたサイラスは、問い詰めるカムイに観念し、全てを打ち明けた。
「普通じゃなくなるけど、カムイと一緒に生きる、か。」
「サイラスさん」
「化け物にはならない、って言われたけど、恐くない、って言えば嘘になるな。でも、これは。」
そう止めて、小瓶の蓋を開け、一気に中身を飲み干した。
「俺が決めた事だからな。」
同じ時間を生きるために。
カムイをひとりぼっちにしないために。
カムイと同じ時間を生きるために。
カムイを泣かせないために。
「っ、うっ」
次、にサイラスが目にしたのは、自分の人さし指を強く噛んで、傷を付けたカムイの少しだけ苦痛に満ちた表情だった。
「カム」
「飲んで、ください。私の血も。」
「お前」
「サイラスさんと、私もずっと、一緒にいたいです。だから、私の血で、サイラスさんが、化け物にならないように、します。しますから、だから」
「わかった」
傷ついたカムイの人さし指に唇と舌をはわせて、カムイの血を口にする。
「ありがとう、カムイ。」
「サイラスさん、愛して、います。」
これは。
竜の女王と 竜の騎士の物語の さいしょの話。