あめ沛然と軽トラックの天井を打つ雨の響き。
ガラスの向こうの景色はひっきりなしに打ちつける雨粒でぼんやりとした抽象画のようになっていた。
なんとなく流していたラジオの声もかき消され、この狭い空間に二人、取り残されてしまったようだ。
忙しなく動くワイパーの動きも追いつかず、仕方なく治は路肩に車を寄せ、ハザードのボタンを押した。
助手席で心配そうにフロントガラスいっぱいの抽象画を眺めていた北信介もその判断に賛成らしく、一旦シートベルトを外すと、ゴソゴソと作業着のポケットを探りはじめた。
「この様子ならすぐに止むやろ。飴ちゃん、食うか」
「いただきます」
出てきたのは熱中症対策であろう、真新しい塩飴。
(相変わらずちゃんとしてはんのやな)
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