記憶のにおい授業で課題が出たときは、どちらかの部屋で一緒に行うことが多かった。その日授業で教わったことを元に、お互いの得意な科目は教え合い、苦手な科目は一緒に悩んで、雑談をしながら、問題に答えていく。
共に非術師の家庭出身の、二人きりの同級生。仲良くしなければ、という義務のような気持ちが最初無かったと言えば嘘になるが、気付けば一緒に過ごす時間が心地よいものになっていった。
「この間実家からお菓子がたくさん届いたからそれ食べながらやろう」
と灰原の一言で、今日の数学の課題は灰原の部屋で行うことになった。
自分の部屋に荷物を置いて、教科書とノートと筆箱と、必要なものだけ持って隣の部屋へ向かう。呪術師という普通ではないこともしているが、放課後に同級生と学校の課題する、ということが〝普通の高校生〟らしいことのように思えて友人の部屋の前で緩んだ口元を自覚する。
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