1111の日「つまり……」
腕組みをした慕情が、厳かな顔で口を開いた。
「この細長い菓子を両端から同時に二人で食べる遊戯、とそういうことか?」
「あ、ああ」風信が頷く。
「……やってみるか」
「……そうだな」
数百年も生きていると、目新しいことというのはなかなか巡り会えない。向かい合いながら、不思議と二人とも「やってみても良いかもしれない」という気になったのだ――俗に「魔が差した」とも言うが。
「だがしかし」
慕情がチョコレートのかかった長細い一本を袋から取り出す。慕情の長い指に弄ばれていると、それはまるでスーパーの駄菓子ではなく、貴人の髪を結う櫛のように見えるから不思議だ。
「いくらお前の口がでかいといっても、この長いものの両端をいちどきに口に含むのは容易ではないのではないか?」
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