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    □これい□

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    □これい□

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    当時書いていたものを掘り起こし。厭きてしまったので供養。

    狼獣人タルと龍人先生 出会い編きゅーん…きゅーん……きゅーー…

    赤や黄色に色づいた葉の山で、1匹の幼い狼が体を丸めて泣いている。
    大きな三角耳をぺしゃりと伏せて、自慢のふわふわな尾は細かい土や葉塗れで汚れていた。
    この幼獣は村の周りで兄姉と遊んだ後、1人で探検するのが大好きな元気な狼だ。
    足腰も強くなり探検する範囲も徐々に広がり、迷子にならないようにと口酸っぱく言われいたのだが、
    見たことのない色をした蝶を追いかけることに夢中になりそれを見失ってしまった時にはすでに遅く
    周りが全く見たことのない景色の場所まで出てしまったことに気が付いた。
    壮大に広がる草原や秋で色づいた木々、花、鳥たちの可愛いさえずり、澄んだ川が緩やかに流れる音。
    1年の半分が雪で覆われるところに住む幼い狼にとってはすべてが目新しい景色だ。
    見たことがない目の前に広がる美しい景色に目移りして今自分の状況が迷子の状態であることをすっかり頭から抜けた狼は
    興味津々に周りをきょろきょろしながら歩を進めていた先には地面が繋がっておらず、小さいからだが斜面を転がっていった。

    「いったぁああ!!!!!!」

    頭からぼふんと枯れ葉の山に突っ込む形で転がりは止まった。
    幸いにも大きな硬い石や木々の太い根っこはなく、多少でこぼこした土の上を転がっただけだったが幼い狼にとってはは結構な痛撃だった。
    そしてたくさんの擦り傷と足首が妙な感覚で思うように動かせない。
    先程まで歩いていた場所は大人からはさほど高くもないがこの狼にとってはなかなかの高さで、今の状態では上りきるにも相当の時間がかかるだろう。
    陽が徐々に西へと沈みゆくのを見て急いで戻らなければとじたばたと足掻くが、
    這いつくばって昇るがずるずると下がってしまい深い海色の大きな瞳からぼろぼろと涙がこぼれていく。

    「だれかぁ…たす、けてぇ…」

    きゅーんきゅーんと切ない声を上げて親を呼ぶような鳴き声は遠くまで響かず、背の高い木々に見下ろされているような感覚に恐怖する。
    更に寂しさと悲しさが増していき落ち葉や土まみれになった自分の尾を抱き寄せて縮こまるように丸まりながら助けを求めるが、他種族の獣人が通る気配はない。
    陽が完全に沈み空が濃紺色に染まり星たちが空で灯り出した。
    ぐずぐずと涙も鼻水も止まらず、幼い狼の助けを求める声が徐々に小さくなっていく。

    「…っ、ぐずっ…ひっ…だれかぁ…いない…の……」

    体から熱が出ていかないようにより丸まって外に1人で一夜を耐え、
    腹も空き瞼も重く視界もぼやけてきたとき、ざくざくと葉を踏みしめる音が近づいてきた。
    ぴくっぴくと音がする方向に耳と鼻を動かすが自分が知っている親兄弟のものではないとわかるも、
    体も頭も動かない状態な幼い狼は近づいてくる何かに反撃する力もない。

    「…どうしてこんな場所に狼の子供が…」

    近づいてきた何者かの呟きを最後に狼は意識を飛ばした。



    「…うぅ…みゅ…むにゃ………んにゅ…?」

    優しく髪と耳を撫でられて幼い狼の意識がゆっくりと上がっていく。
    ちくちくした葉の山の上から何故かふかふかのさわり心地のいい布の上に居ることと落ち着く甘い匂いが鼻と耳をくすぐられて少しむずかゆい。

    「(ちっちゃいとき…母さんと一緒に寝ていたあのときに…にてる…)」
    「目が覚めたか」

    幼い狼と向き合うように1人の大人が横たわっていた。
    見たことのない人種だがとてもきれいな人で幼い狼の心に強い印象を与えるほどの美しさと精悍な顔、心地のいい優しい声。
    指先でふにふにとあまく掻くように触られ、耳の中からすすすと撫でられ、幼い狼にはとって初めて感じる気持ちよさにしぴぴぴと小さな尻尾が震えた。
    そして幼さ特有の柔い頬を荒れがない大きな手に撫でられて気持ちよなりとろんとろんとまどろみに揺られていく。

    「ん、さっきより顔色もよくはなってるな」
    「ぅ…?みゅ…?きゅ…」
    「ふふ、舌先が出てるぞ」

    ちょいちょいと軽く突くと、狼は口元をもごもごさせて舌先を仕舞ったのが愛らしくて思わずふふっと男は笑った。
    布団をかけなおされ背中をポンポンと優しくなだめるように撫でられてたのをきっかけにとろんとろんと瞼が閉じていく。

    「まだゆっくりおやすみ…」
    「ぅん…んぅ……ふにゅ…」

    大人は起こさないように彼を優しく抱き寄せる。
    密着したことにより子供特有のぬくい体温が薄い服の上からもじんわりと伝わってきた。
    やがて「ぷすぷす…」と愛らしい寝息を立てた幼い狼に大人は眼を細めて微笑んだ。
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