長い睫毛が伏せられて、宝石のような青い瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
「レオン?」
「っ、ギィ……!?」
少しだけ上ずった声。
白く滑らかな肌に流れる雫。
弱音の一つも吐かないあのレオンが泣いている。
ギィは辛抱たまらずに、顔を隠そうとするレオンの手を掴んだ。
「……誰だ」
いつもの飄々とした態度を捨て去って、ギィが低い声で呟く。
「誰にやられた」
「なんでもな……」
「言え、レオン」
ギィは身の内に抑えようのない激情が荒れ狂うのを感じた。
「誰が、お前を傷つけた」
周囲にギィの魔力が溢れ、血の色よりも深い紅の髪がぶわりと広がる。
「違う、これは……!」
レオンは否定するが、未だその瞳から涙が止まる様子はない。端整な顔を歪めては、瞬きする度にローブを濡らしている。
「いいから離せっ」
「安心しろ、ちょっと何処かの国が滅びるぐらいだ。お前が気にすることは無い」
「だから! 人の話を聞け!」
一歩も譲らないギィに痺れを切らしたレオンが、勢い良く頭突きをくらわせた。
ゴツン、と鈍い音が響く。
互いにダメージを受けてよろめいた所で、ギィが額をさすりながらむっと唇を尖らせた。
「……一体、なんだってお前は泣いてんだ」
レオンが強がりで拒絶している訳でないのは分かった。
それならば何故、とギィは問いかける。
先程より落ち着きを取り戻した真紅の瞳がじっとレオンを見据えた。
レオンは溜め息をつくと、瞳に滲んだ涙を拭って堂々と告げる。
「そんなもの、目に埃が入ったからに決まっているだろう!」
「……は?」
ギィの思考が止まる事、一呼吸。
「はぁぁぁぁ!?」