リヴァエル夏。没。嵐と共に部屋にやってくるリヴァイのリヴァエル。
ごうごうと激しい風が吹き、強い雨音が窓を打ち鳴らしていた。
現在、午前2時。
エルヴィンは暗い自室で映画のエンディングを眺めながらウィスキーの入ったグラスに唇を付けて飲み干す。カラン、と溶けて小さくなった氷が小さく音を立て、熱い酔った吐息が漏れた。
良い、映画だった。嵐の音も含めて。
今年一番の夏の嵐が近づいていた。数時間前、深夜までオフィスで仕事をしていたエルヴィンは暴風雨のおかげでビショビショになって帰宅した。シャワーを浴びて髪を拭くと、ふとそういえば見たい映画があったのを思い出す。仕事の疲れはあったし寝てしまっても良かったが、その映画は今日の様な嵐の日に合うのではないかと思えば、眠気は飛んでいた。簡単な夜食とウィスキーを用意して、映画の配信サービスサイトからタイトルを探す。短いダウンロードの後に映画はすぐに始まった。
一人の男が小さな夢を叶えるストーリー。
嵐の音に加え、部屋の電気を落とすと更に臨場感が溢れた。脚本も演技もサウンドも良くてエルヴィンはエンディングまで見入っていた。時計を見れば深夜二時。明日の予定は午前に病院へ行くだけで仕事は休みだし、この満足感のままソファーで寝てしまおうか。などと考えていると、映画を見ていた部屋のベランダでカタン、と音がしたことに気が付いた。
嵐の音は続いていたし、何かが飛んできたのだろうか。エルヴィンはさして気にせずソファーに横になると体にタオルケットを掛けて映画の余韻を感じながら眠りに入ろうとした。その瞬間。
カララ……。と閉じたカーテンの奥でベランダの窓が開く音がした。
ソファーからその窓までは2メートルも距離はない。エルヴィンはぎょっと目を見開く。嵐は窓を開けない。雨風から逃げてきた動物がいたとしてもこんな風にできるだけ音を立てないように窓は開けない。ならば、誰か人間が自分の部屋に入ってこようとしている。この嵐の夜に。
強盗か。
エルヴィンは先程まで飲んでいたウィスキーの瓶をそっと手に取った。
強盗と話合いで解決できるならそれで良いが、もし武器を持って行って命の危険があるならば撃退しなければならない。人が通れる分だけ窓が開いて、カーテンが揺れる。