(複雑なんて言われてもね)
何が複雑だというのかわからない。遥と繋がれるあの時間。幸福感も高揚感も全部遥とともにあって、その時の音を聴いたはずの自称宇宙人は、複雑だと評した。
奏はヘッドホンもベースも傍に置いて、背中からベッドに倒れた。時々、あの時、対バンの後、曙に言われた言葉を思い出す。
複雑なことなんて何もないはずだった。だって自分の音楽は遥と繋がれるもの、遥のためにあるもので、ほかには何もない。何もないのに、その言葉を思い出すと胸のうちのどこかがざわざわとした。
もう忘れてしまえばいいと思うのに、その声はいつまでも残っている。