やっぱり曙サンさ、今日ちょっと元気なくない?
そう顔を覗き込まれて、涼は目をぱちくりとさせた。公園の噴水の縁に並んで腰掛けて、いつもと同じように奏のその兄である遥との出来事を聞いていただけなのに、どうしてわかったんだろうと思う。
奏の目はじっと真っ直ぐに自分の目を見てきていて、涼は笑った。本当に心配してくれてるんだなと思って、誤魔化せないなあと思った。
「ありがとう。実はケンケンと深幸くんが、朝から揉めちゃって」
すると奏は頬を膨らませて、やっぱり涼は目を細めた。
「あのさ、そういう気になることがあるなら言ってよ。そりゃぼーのがいつも俺の兄貴の話に付き合ってくれてるのは知ってるよ? でも俺だって、ぼーのが落ち込んでたら気になるんだからさ」
そう言われて、素直にごめんねと謝る。でも謝ってすぐについ笑ってしまったからか、奏はまた不服そうな顔をした。
「ごめんね。奏くんがオレのこと、心配してくれたのが嬉しくて」
奏が兄とのことで苦しんでいるのは見ていたし、仲直りしてからもうまくいかないと話を聞いてあげたり、最近はようやく、こんな楽しいことがあったと二人の幸せそうな話を聞かせてもらえるようになっていた。そうして笑うようになった人が、自分のことを心配してくれたのが嬉しかった。
「ぼーのってほんと……」
奏は呆れたように嘆息して、そして何かにふと気付いたように、ポケットの中をごそごそと探って何かを取り出した。手のひらの上には赤い包み紙の丸いアメが二個あって、それを奏は、一つくれる。手のひらの上に、それがコロンと乗った。
「今日クラスの友達にもらったんだけど。兄貴と分けるつもりだったけど、ぼーのにあげる」
「いいの?」
すると奏は最近よく見せてくれるようになった、幸せそうな顔でふふんと笑った。
「ぼーのがよくくれたやつだよ。甘いもの、食べると幸せになれるでしょ? 食べたらぼーのが幸せでいてほしい人たち、幸せにしに行こうよ」
「そうだね」
くすっと笑い、ありがとうと返してアメを口に入れると、甘くてつい顔が緩んだ。隣を見れば今度は奏も、満足そうに笑っていた。