よく笑う奏。ちゃんと相手の目を見て話す奏。そりゃあ誰もが奏の方に寄っていって、仕方がなかったよなと思う。そんなことを、今になって冷静に思う。
でも今は。何で俺以外に愛想振りまいてんだよと思った。お前はこっちだけ見てりゃいいだろと、そんなつまらない独占欲がふつふつとわく。
「奏」
遥はその名前を呼ぶと、隣に立って片腕で奏の腰を抱いた。
「まだかよ」
わっと驚いた奏の体が近くなる。
抱き寄せられると奏は一度だけこっちを見て、そしてどこか嬉しそうに、今まで話をしていた友人たちにバイバイと手を振った。
「よかったのかよ?」
尋ねれば、それ兄貴が言う? と返ってきたから、まあそりゃそうだなと頷いた。