奏が出て行こうとするのを感じ取って、遥はその体を後ろから抱きすくめた。窓の外はまだ薄暗い。こんな時間から起きなくたって別にいいだろうと思う。
「兄貴〜、これじゃ起きられないって」
奏がくすぐったそうに身をよじったから、遥は抱きすくめる腕にもう少しだけ力を込めた。
「ならまだ寝てりゃいいだろ」
「朝ごはんどうするの」
「米が炊けてりゃいい」
そんなバッキーじゃないんだからと奏がぶつぶつ言うけれど、まだ離してやりたくなかった。
「じゃああと五分?」
「……あと一時間」
すると奏は笑って、そしてわかったよと頷いた。