「貴方じゃないとだめなんです…!」 春。四月。
先日中等部の入学式を終え、今日は高等部の式があった。また新しい1年がスタートする今日の良き日に、自然と気分が高揚してくる。
窓の外を見下ろせば、桜の花びらが舞う中庭に新入生と見られる生徒が親や友人達と楽しそうに会話を楽しみながら歩いている。
微笑ましいその光景を眺めながら、さて自分も残りの書類に取りかかるかと換気を終えて窓を閉めようとした時だ。集まっている新入生の中に目立つ宍色の髪の少年を見つけ、ガタッと音を立てて席を立つ。
「…っ、おい、宇髄!あの少年を知っているか?あの、変わった色の髪の…!」
校門の外へと向かう後ろ姿に焦り、偶然隣にいた同僚の宇髄につかみかかる勢いで尋ねると大層驚かれたが「あぁ。あいつな」とすぐに答えてくれる辺り有名人なのか。
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