きみにあげたい気ままに漂う波間にネオンが浮かび、折り重なったシンセサイザーが大勢の人々の中を駆け抜けていく。
みずみずしい肌を惜しげも無く晒しながら音に身を委ねる若者たちの中心で、フェイスは今日も一際輝きを放っていた。自らの手で紡いだ音楽に人々が気持ちを預けている姿を眺めるのは気分がいい。
人助けなんて建前はとっくに意味をなさない。もともと何事にも受け身なフェイスにとって、オーナーが毎度のようにタイミング良く声をかけてくれると都合が良かった。先日の非日常な一件にあてられたような気もして若干後ろめたくはあるけれど、長い間ヒーローと音楽、そのどちらにも不誠実だったことを省みて、もう一度音楽とも正面から向き合うことを決めたのだ。自分の得意なことや好きなことで誰かの力になれることは素直に嬉しい。
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