一刀接待迷宮 王都パルテダの冒険者ギルドではまことしやかに囁かれてる噂がある。
年に一度、確定で迷宮がバグる日がある、と。
リゼルは目の前に広がる光景に一種の感動さえ覚えていた。
砂塵を巻き上げ何人をも拒むように荒れ狂う風にリゼルは乱れる髪を抑え、目を眇めつつようやく認めた暴風の中心には大口を開け威嚇の咆哮を上げる深緑の竜がいた。
以前に会敵した地底竜とは比べ物にもならない圧倒的な魔力の奔流。巨大な翼がはためくたびに深い深い緑の体躯が煌めくのは溢れ出る魔力のせいだろう。
このボス部屋に入った時から肌がちりちりと痛むのは魔力中毒の症状だ。
これ程の竜がまさか迷宮に存在したなんて。
「今年は緑竜か」
リゼルの感動を余所にどこか弾むような声音が頭上から聞こえてたまらずリゼルは黒衣の男を見上げた。
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