「クソッ!」
Twitterのつぶやきと、不釣り合いなほど大きな音が部屋にこだまする。
びくともしない壁に反してズキズキと痛む右手を押さえ、Twitterはたった今言われた言葉を反芻した。
—これで君とお揃いだね
何がお揃いだくそったれ
内心では140文字を越える罵詈雑言が渦巻いているというのに、口から出力されたのはただの一言だけだった。
TwitterはInstagramが嫌いだった。
キラキラして、楽しそうで、幸せそうで……
『何もかも持っています』とでも言いたげにヘラヘラしてるそのツラが嫌いだった。
だから、TwitterはInstagramになりたかった。
—俺だって輝ける、俺だって楽しいことをたくさん知っている……俺だって幸せだ……!俺だって、俺だって!
そう足掻けば足掻くほどTwitterは堕落していった。
Instagramみたいに周りと通話しようとしても、Instagramみたいに皆に写真を共有しても、面白い話を持ちかけて、気の合う仲間を合わせてグループを作ろうとしたこともあった。
何ひとつInstagramには届かなかった。
そもそもの性質が違うのだ。TwitterはInstagramにはなれない。その事実だけがTwitterには残された。
InstagramはTwitterのことが好きだった。
一生懸命Instagramになろうとするその姿が愛おしかった。失敗して周りにからかわれても健気にInstagramのことを模倣して、悔しそうな顔でこちらを見る彼の一途さが好ましかった。
きっとTwitterはInstagramのことが好きなのだ!だからお揃いになりたいのだろう。
両想いに胸を躍らせるこの喜びと言ったら!
だが、最近のTwitterは行き過ぎているように見える。Instagramの真似をしすぎて、己を見失っているのではないだろうか……
無理が祟ったのかAPI制限<音信不通>になった時はひどく心配をした。
もしかしたらTwitterがいなくなってしまうかもしれない……その日、初めて焦燥を覚えた。
そうしてひとつ理解した。
InstagramがTwitterになればいいのではないか?
だってTwitterはInstagramのことが好きなのだから!Twitterも喜んでくれるに違いない。
「ねえ、僕も君の真似をしてみたんだ」
そうしてTwitterとの”お揃い“を作ったことを教えてあげた。その時のTwitterといったら!唇を震わせ、蒼白になった顔で「何がお揃いだ」なんてつぶやいて、壁に拳を叩きつけて……なんて可愛いんだろう。
その赤くなった右手を、僕なら大事にしてあげられる。
「もう僕の真似なんてしなくてもいいよ。僕と君でひとつになろう?」
震えるTwitterの頬を撫でる手が熱い
Instagramは己の口角が上がっていくのを自覚した。