月が綺麗ですねいつもの場所でミサイルは足を止めた。立ち止まったまま、辺りの草を鼻で弄るミサイルのリードをいつも通りに木にくくる。
リードは手放したが、反対側の手は離さない。手を繋いだまま、ふたりで土手を降りていく。自分がよろけると、真夜さんが二の腕を掴んで支えてくれた。正直なところ、掴まれた箇所が少しだけ痛かったのだけど、これはこの人が焦って手を差し出したからだと分かっている。咄嗟の判断で手加減できる人ではないところが好きだなと思ったが、黙っていた。伝えたら、二人とも照れ隠しで走り出してスカイツリーまで行ってしまう気がする。
手を繋ぎ直し、橋の下まで歩いた。わざわざ手を繋ぎ直したのはちょっと恥ずかしかったかな、とか、ミサイルがこの場所で待たされることが分かっているのって結構恥ずかしいな、とか思いながらいつもの場所にたどり着いた。
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