食傷 グラエムが唇を離そうとしたその時。
舌がじゅ、と吸い寄せられる。それと同時にコガルドに強く搔き抱かれ、逃げ場を失う。
抵抗する素振りを見せなければ…いや、たとえ抵抗したところで、コガルドはグラエムとの口づけを続けようとするだろう。
互いの舌が、互いの口内で交差する。
先程の貪り合うようなそれとは打って変わって,ゆっくりと深く、長いキスだった。
さまざまな感覚が鋭敏になる。舌のざらつき、熱く粘滑な口内。肉欲に濡れた吐息。情事を彷彿とさせる水音が脳を犯す。まるで恋人同士が行うようなそれに、脊髄にぞくりと鳥肌が立った。
グラエムにとってその感覚は、不快だったのか、はたまた快であったのか。
もうどちらの唾液が甘かったのかも分からない。互いの境界が曖昧になってきた頃、コガルドは惜しむようにあなたの唇を一舐めしてから顔を離す。
「………ッハハ、腰砕けになられても困るから、な」
あなたの背筋を手爪先でつつ、と撫ぜると、したり顔でそう言った。
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