血塗れのヴィクターの周りにはいくつもの死体。ぐちゃ、みちゃ、と嫌な音を立てながら死体を貪り血を啜る彼。ジェーンに気付いた瞬間
「…だから私に深く関わるのはやめろと言ったのに」
と口周りの血を拭いながら、ジェーンに襲いかかり…
「いやあああっ」
そこで目が覚める。
次の日。いつも通りに仕事をしようとするが、ヴィクターを見る度にあの夢での彼を思い出してしまい、気分を悪くしてしまう。
「ジェーン?」
「何でもないよ、放っておいて」
ふらふらとし足取りで休憩室へと向かおうとするジェーンであったが、目眩がして倒れかける。
「っ!」
ヴィクターがジェーンを支える。
「何も無い訳がないだろう。…とりあえず休め」
そう言われて彼に抱えられ、休憩室のベッドへ運ばれる。
それから少し仮眠を取ったジェーン。目が覚めるとヴィクターがベッド横で座っていた。
「ヴィク…」
「起きたか」
「…うん。ごめん」
少し寝たおかげで気分の悪さはおさまったが、やはり彼を目の前にするとあの夢が脳裏に浮かんでしまう。そのせいで今日は彼や同僚達に迷惑をかけてしまった事を悔やむジェーン。しかしずっとこうではいけないと、意を決して夢の内容をヴィクターに伝える。
「…成程。夢の中の私は化け物と化していた、という事か」
普段の言動から彼がそんな風になるとは考えられないし有り得ない事だが、それでも恐怖を拭えないのは彼が"吸血鬼"だから。
「…絶対」
「?」
「絶対、化け物になっちゃダメだよ、ヴィク」
「約束して」
いつになく真剣なジェーンの眼差しに「ふっ」と笑った後、
「…ならんよ。私は」
愛すべき"人間"を、ましてや目の前の愛しい娘を傷付ける事など出来るものか。とヴィクターは心の中で続けて言った。