Diamond Lilly 遠く、雷の音を聴いた気がした。
パシャ、と軽く響いた水音に、溜息をひとつ。
ブーツの底から、避け損ねた水溜りを叩く感触が伝わる。
足を止め、獅子神は天を仰いだ。金縁の丸眼鏡をずらすようにして、遠く、西の空を見る。
また、一雨くるかもしれない。
数分前に止んだ突然の雨は、幸いにも偶然見つけ駄菓子屋で回避することに成功した。だが、同じような幸運が何度もあるとは限らない。
急ぐか……と。眼鏡を掛け直して足を動かすその耳に、再度、響く雷の音。
遠く。けれど、先程よりも確かに近く。
急がないねぇと、と足を早める視界の端。ちら、と目につくピンク色。
――――「花を買ってやろう」
どこからか、聴こえたその声は。
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