140文字SS『一時休戦』
「あっ、やぁ…ぎろ、も…むり…」
また無自覚に彼を煽ってしまい、押し倒された。
「夏美…毎回ワザととしか思えんが、お前は無自覚に煽るからな」
イジワルく言われ奥を何度も突かれる。限界がみえた時
「もう終わりか?一時休戦してやるぞ」
嗤いながら低音でそう囁かれ、あたしは意識が遠のいていった。
『御冗談もほどほどに』
想い人から突然の告白。信じられずに叫ぶ。
「な、夏美。冗談も…程々にしろ!」
途端に睨まれ
「冗談じゃないわよ!あたしギロロの事ずっと…!」
琥珀色の瞳に魅入られ動けない俺は彼女から抱きすくめられた。
「ずっと、好きなのに…」
絞り出すよう紡がれた言葉に返答するため、俺は夏美の瞳を見つめた。
『駄目にならない程度でお願いします』
リビングから聞こえる夏美殿の楽しげな声の後に
「おんわー!」
と、ギロロの叫び声が聞こえ、その後静かになった。彼女の抑えた笑い声だけが聞こえる。どうやらまた夏美殿からのスキンシップが奴の限界値を超えたらしい。
ため息をつきつつ
「夏美殿…伍長が駄目にならない程度でお願いするであります。」
『朝食を御一緒しませんか』
ケンカをしてしまった。
「もういい!」
と言い捨て部屋に逃げ込む。素直に謝れないまま、眠ってしまった。
翌朝、小さくノックする音で目が覚める。ドアが開きギロロがそっと入ってきた。
「夏美…昨日はすまなかった。その、お詫びに…朝食を御一緒しませんか…?」
と、傷だらけの手で運んできてくれた。
『あの子が欲しい』
「お前はあの子が欲しいのか?」
兄から突きつけられた質問に俺は返事に詰まる。しかしこれほど想いを寄せた相手は今まで居なかった。
強い意志を持った琥珀色の瞳、桃色の艶やかな髪、地球最終防衛ラインと呼ばれる強さ…。
そうだ。
「俺は望めるのであれば…夏美が欲しい。」
きっぱりとガルルに告げた。
『始めから壊れているの』
「何であんな事したの?銃なんか乱射して!」
「アイツらお前をナンパしようとしてたんだぞ?威嚇に決まっているだろう!」
「何言ってるの?ギロロあんた時々オカシイわよ?」
危機感のなさにカチンときて、思わず床に押し倒して彼女を睨みつける。
「夏美、お前に関しては俺は始めから壊れているんだ。」
『忘れてあげる』
「見たでしょ!」
「み、見てなどいない!」
そう言う割に真っ赤に発光していた顔を反射的に平手打ちしてしまった。手形が痛々しい。
だけどギロロは冬樹そっくりのUMAを見てホテル中に響く悲鳴を上げたあたしを心配して駆けつけてくれた。彼には言えないけど嬉しくて。それに免じて今回は忘れてあげる。
(昨日、cartoonで172話があったのでw)
『この寂しい口に、キスをどうか』
3泊の修学旅行から帰宅した。ギロロに家に居るよう約束させたけどちゃんと守ったようだ。
庭に入った途端「夏美!」と抱きしめられる。
「ただいまギロロ」
「…った」
「えっ?」
「…寂しかった」
彼の腕に力が入ったのを感じ嬉しくなる。あたしは
「もう、寂しくないね」
と寂しいと言った口にキスをした。
『愛される覚悟をしておいて』
いつからか…あたしを見るアイツの視線の中にある、隠しきれない想いに気づいてしまった。でもアイツの性格上、あたしと同じで伝えることはないだろう。…そう思っていたのに。
帰宅して部屋に入ると机の上にアイツからの手紙があった。
たった一文『俺に愛される覚悟をしておけ』
どくん。心臓が跳ねた。