青い家幼い頃の夢を見ていた。
たまに後ろから飛んでくる石。
ばかなやつら。
おれはそんなものには当たらない。
誰にもつかまらない。
おれは誰よりも早いから。
駆け抜けた先にある小さな家。
いくつも傷のある扉を開ける。
声をかけると振り向く、金髪の女性。
おれの名を呼ぶ優しい声。
痩せたけれど温かい手が頭を撫でる。
「駄目よ」
手が、外を指す。
「まだ、駄目」
「イヤだ」
「いきなさい」
背を押される。
「ラーハルト。いきなさい」
扉から光が溢れて、そして。
「私達の分まで」
母の後ろにいる、背の高い青い影が言った。
「いきなさい」
外に向かって更に背を押す、逞しいもう一つの腕。
「父さん!」
手を上げると、内張りの先の固い感触があった。
棺桶の蓋を押し上げる。
そこは、森の中だった。