あの日から一夜開けたのだが、あさとの気持ちは沈んだ状態だった。
「大丈夫か?」
「ちょっと・・・」
あんな思いをすれば誰だってそうなるだろうが、今までの自分ならそんなことは言わなかっただろうと思う。心配するあさとに笑って見せるが、無理に作った笑みであるのは明白だった。
「きょうはいっしょにいて・・・」
あさとがそう言うと、俺はあさとの隣に座った。
「うん・・・」
俺が隣に来ると、あさとは嬉しそうにして体を預けてきた。
「あのね・・・」
「なんだ?」
不意に頬にチュッとキスをされる。いきなりの事で俺は赤面してしまった。
「えへへ・・・」
そう言ってまた身体を預けてくる。その様子からして何か言いたいことがあるようだったが、あえて何も聞かないでおいた。今はただこうして寄り添って居たかったからだ。暫くするとあさとも落ち着いてきたのか、少しずつ普段の様子に戻っていった。
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