テーブル席空いてても テーブル席空いててもカウンター席
「こんにちは」
「いらっしゃいま——なんだ、イレブンか」
ギィと音をたてて古びたドアを開けると、イレブンに真っ先に声をかけてくれたのはカミュだった。
「なんだとはなんだよ」
「いやぁ別に。ほら、水」
店内を見渡すとイレブン以外に三組がテーブル席に着いていた。この店ではもはや見慣れた光景だけれど、全員が女性客だった。
イレブンは当たり前のようにカウンター席の端っこを陣取って、メニュー表も見ずに座っている。この店のケーキはどれも美味しくて迷ってしまうから、曜日によって頼むメニューを変えているのだ。そのことはカミュも知っていて、以心伝心で注文が通る。
「カミュ、今日は何時上がり?」
4550