二十五日の朝バルナバスの寝起きは悪い。おまけに今日は日付が悪かった。
「なあ、機嫌直してくれって」
「眠いだけだ」
そう言って寝直そうとする彼の手には有名ブランドの箱……たぶん時計か何かが入っていると思われるのものが握りしめられていた。
「最近忙しくて日付の感覚が無かったんだ。昨日は帰ってきたときお前はいなかったし、そのまま寝ていても仕方がないだろ?」
イベントを楽しみにしていた子供を宥めるような気持ちでクライヴは弁解する。
実際、バルナバスはかなり念を入れて準備をしていた。元々まめまめしい男である。夕食のレストランも、ドライブコースも、その後のホテルも全て揃っていた。予習さえしていたほどである。ところが、肝心の相手は当日家で健やかな寝息を立てていた。
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