どうせなら笑って死ねれば良かったね注意 現パロ つらい 何でも許せる人向け
⚡︎
終わりは音もなく始まる。そして、始まりが終わっていくのもまた、音もなく静かな夜のことだった。
仕事辞めてきた。そう言って獪岳は、割引シールの貼られた惣菜パックをどさどさと炬燵の上に置いた。笑ってもないし、怒ってもない。仕事辞めてきた。その言葉には、何の感情も乗せられていなかった。だから俺はそのとき、なんて声を掛けたらいいのかわからなくて、結局、そっか、ってありきたりな相槌しか打てなかった。十二月末、世間が数日前のクリスマスムードをすっかり忘れ、年の瀬に浮かれる夜のことだった。
コンビニ、スーパー、駅前の百貨店にあるショーウインドウ。どこもかしこも来たる年越しに備えた品揃えで、道行く人々は餅や煮豆の類を脳死で買わされていた。大通りに面した交差点の信号が青になると、視覚障害者用の誘導音が鳴り、眩暈がするほどの会話の群れが地響きのように鼓膜を震わせる。
11531