ローダンセそれは、先週の金曜のことだった。
「不死川。次の土曜は、暇か?」
夕食の最中、その男はいきなり切り出した。今まさに生姜焼きを抓もうとした手を、止める。顔を上げると、いつもの涼しい顔が俺をじっと見つめていた。
「別に、何もねェけど……どうした?」
「少し、出掛けないか」
相変わらず食べかすだらけの口周りを拭きながら、冨岡に問う。お互いもう慣れたもので、俺がティッシュを持って手を伸ばすと、冨岡の方から顔を近付けてくる。どちらの動きも笑えるくらい自然だ。
一通り汚れを拭ったところで、冨岡は口を開く。聞けば、ドライブに行きたいらしい。
「ドライブって……どこ行くんだァ?」
冨岡からこういうことを言い出すのは珍しく、首を傾げる。冨岡は何を言うでもなく、カランとグラスを揺らしながら、小さく微笑んでいた。むふふ、という独特な笑いは、こいつがご機嫌であることを示している。
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