お風呂でみかんを食べる話 長く上演した舞台がついに千秋楽を迎え、見事やり終えたという達成感と疲れが一気に押し寄せる。
重い荷物を抱え、二人で帰路につく。劇場を出るとちょうど雪がちらつき始めた。タクシーはこの雪で一向に捕まらず、仕方なく自宅までの徒歩半時間ほどの距離を歩くことにした。
「立花くぅん、僕もう歩けない。とても寒いし」
「カイロ使いますか? 根地先輩の分もあります」
すでに薄く積もり始めた雪道をテキパキと進みながら、希佐はポケットからカイロを出すと根地のマフラーと首の間に仕込む。
「少し温かい!! 大変準備がよろしいね、君は。あ、立花くん、頭に雪が積もってる」
「根地先輩もですよ」
「んふふ、眼鏡のレンズにも積もってきちゃった。早くお家に帰ってお風呂に入りたいな」
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