逃げた太陽追う北風彼から運命の番だと言われた時嬉しく、そして幸せな気持ちになったのだ。それと同時に分家とは言え名家でアルファ彼と釣り合う筈が無く、人力柱で何よりオメガな自分と結婚すれば彼迄中傷に合うのがナルトは何より恐ろしかった。
一緒にデートを重ね、初めて手を繋ぎキスをした日の夜には眠れない程に幸せだった。だからこそ一夜の誤ちで重ねたあの日のたった一度が自分の人生を変えたのだと、ナルトは後悔した。
妊娠検査薬には陽性の印を現しており、何度見ても変えられない事実がそこに重ねてある。
「どうするってばよ」
この日ナルトは久方振りに後悔をした。
直ぐ様サクラと綱手の元に行き本格的な検査をして貰うと、二人は真剣な顔でナルトに顔を合わせた。
「妊娠二ヶ月だ。まだ降ろせる範囲だがどうする」
そう見詰める瞳は真剣にだが心配も混ざり、ナルトの体を気遣っている表情をしていた。サクラもナルトに心配げな表情で見詰めている。
ナルトは宿った時に答えを決めていた。
「俺産むってば。俺の腹に宿ったと分かってから決めてたよ」
「男のオメガが産むのはリスクが伴う。下手したら死ぬぞ」
綱手の硬い表情にナルトは戦闘時に見せる様な真剣な顔で告げる。
「俺は死なねぇ。コイツを一人残して、何より俺みたいな想いなんてさせねぇ」
「なら入院だな。今直ぐ手配する」
「なぁ…ばあちゃん……俺暫く行方眩ませちゃ駄目かな」
ナルトの言葉に綱手の目は見開き、サクラは泣きそうな表情をしてナルトに聞く。
「何でよ!ナルト!!……まさか、相手は…!」
「サクラちゃんの想像の通りだ。俺はアイツに迷惑掛けたくねぇ」
「けど、ナルトはあの人との話しを楽しく聞かせてくれたじゃない!!絶対迷惑じゃないわ!」
ナルトは俯き表情は見えないが肩を震わせていた。そして上げた表情は悲しげに眉を下げ無理矢理笑いながら告げる。
「いいや迷惑になる。アイツがそう思わなくても周囲は黙っちゃいないってばよ」
「そんなこと…」とサクラは言いかけ口を噤いだ。ナルトの境遇を思い出したからだ。
「アイツは俺の事を愛してくれている。だからこそ迷惑かけたくない」
ナルトは真剣な青空の瞳を瞬かせ告げた。
「アイツのネジの子は俺一人で育てる」
決めたら一直線の彼の決意は硬かった。
それからナルトは色々準備をした。ネジに知られないよう。シカマルにキバにシノとチョウジに伝え、口の硬いシカマルとシノは伝えないと約束し、キバとチョウジはサクラが念を押して伝えないよう言っていた。敢えていのには伝えずに、日向には伝え全て話すと悲しげな顔で応援してくれた。そしてネジに知られない様に、シカマル達に手伝って貰い、里から出る日が来た。
里から旅立つ朝にナルトは固い表情で門の前に立っていた。
「じゃあなナルト、早く帰って来いよ」
「ちゃんと元気な子産むのよ!」
「お前ならやれる!行ってこい!!」
シカマルとサクラとキバが声を掛け次々ナルトを応援する言葉が告げられる。
「行って狂ってばよ。一年すれば帰って来る」
門から出るナルトを送る皆は笑顔で、ナルトが見えなくなると表情を固くし、中には泣きそう涙を浮かべる者もいた。
「ナルト君帰って来るよね…」
「……アイツは約束な守る男だ。心配するな」
「そうそうナルトは約束は守るもん」
旅立つナルトに各々は不安と彼の決意を尊重したく、だがもう一人の男が知った時にどう行動するか不安とナルトへの執着への恐怖を募らせ数人表情を青くすると、解散したのだ。
ナルトは砂隠れに向かっていた。体な不安定な時期中為歩きで向う道程は遠く、不安な気持ちが付きまとう。空はそんなナルトの気持ちを表すが如く灰色でそんな空を見上げ嘆息を付いた。先は長そうだ。
ネジは一ヶ月の長期任務から帰ると、一旦家に帰り風呂に入り着替えるとナルトの元へ顔を出すのに家に向かった。
向かう道程は軽く、やっと彼に逢えるのに気分が上がりながら道行く気持ちは心做しか明るく見えた。
ネジがシカマルとチョウジと擦れ違う瞬間、驚いた顔をした二人の反応とチョウジの少しの焦りを見たネジは、何かが引っ掛かるが気にすること無く向かう。
思えばこの時その事を強く疑問に思い二人を問いつめていれば良かったと、ネジは後悔した。
ナルトの家に行くと不在であり、急な任務が入ったのかと思い後にした。
それから一週間経ち違和感を抱くが、長期任務なのかとネジは言い聞かせた。一ヶ月が経ち何かがおかしいと気付きネジは行動を起こした。
先ずは何かを知っている筈の同期を尋ねた。
あの時違和感を抱いた、シカマルにチョウジを問いつめるが二人は知らないと告げ、次々ナルトの同期に聞くが、サクラからも情報が出てこなかった。
これはナルトの事で何かを隠していると思ったネジは、本格的に調べだした。先ずはナルトの部屋に鍵明けをし入った。部屋を見ると何かの薬があった。良く見ると吐き気止めで、ネジの頭にある事が浮かぶ。いや、まさか、有り得ないと頭の中が困惑する中寝室のゴミ箱を見ると、ある物が入っていた。妊娠検査薬結果は陽性。ネジの思考は止まり、彼が逃げた事に気付きネジは笑いだした。
「クククッ……俺から逃げられると思うなよナルト。待ってろ…俺の白兎…今、お前を捕まえに行くからな………」
そう呟き維持の悪いいつもの笑みは白眼を開いてないにも関わらず、額に血管が浮かび彼が憤慨している事がわかる。
ネジはその場から術で消えると、先ず直ぐに吐きそうな奴を問い詰めに行った。
直ぐに言いそうな人物、シカマルの元に行くとキバとチョウジとシノもおり、怒りの中でも何故か冷静なネジは過去一恐ろしい表情でいつもから思えない程の低い声で尋ねた。
「……なあお前ら良いか」
ネジの声が聞こえ振り向くと、瞬時に三人は悟り過去一恐ろしい表情のネジに肩が飛び跳ねる。唯一シノだけがいつも通りだった。
「ど、どうしたんだよネジ」
「ちょっと聞きたい事があるんだが」
「何だよ俺らに聞いても分からないと思うぞ」
「心当りは有るだろ……?ナルトの事だ」
彼等が唾を飲んだのにネジは確信する。
「俺は今最高に機嫌が悪い。今此処で半殺しにされたくなければ正直に言え」
彼等は何度も頷くと正直に話した。唯一この事に動じず平常だったシノは嘆息を付き、恐ろしいがサクラに知らせる算段を頭に浮かべた。
その後全てを知ったネジは砂隠れに向かうのに、人が未だ眠る早朝に門へと行くと、後ろに気配がし先程からネジを隠れて追ってきた知る気配に振り向いた。
「何だ」
「………ナルトの元へ行くなら一つだけ約束して頂戴。どうかナルトを怒らないであげて」
無表情で聞くネジにサクラは続ける。
「ナルトは貴方の子を迷惑になるから一人で産むと言ってたわ」
「迷惑になる訳が無いだろう」
「………普通ならそうね。ナルトの境遇に本人が自分が貴方と関わると悪く言われると言ってた。全ては貴方の事を思ってだから……だからナルトを恨まないで」
ネジは俯いていた顔を上げ笑うい声を上げると、不敵な顔を浮かべた。
「ククッ…流石アイツだな。相変わらずのバカだ、俺はそんな事気にしない。だから安心しろそんな事だとは思っていた」
「…………なら!」
サクラは嬉しそうに顔を上げネジを見る。
「怒りをぶつけるつもりは無い。安心しろ」
ネジは其の儘歩き出しサクラはその背中を見詰める。
「ちゃんと連れて帰らないと殴るわよ〜!!」
サクラの大きな声に背筋に寒気が走ったネジだが、そんな事は不問だと思っていた。絶対連れて帰ると、決意を胸に抱き早足に木々を駆け抜けた。
ナルトは大きくなった腹を大切そうに抱え、砂隠れの病院の庭を歩いていた。
砂隠れは木の葉と違い、常に砂が吹く景色にも慣れあの日から何故か心から笑えなくなりながらも、笑顔で居ようと心掛けた。
庭に出ていると、今日も仕事の合間を抜い我愛羅が見舞いに顔を出す。
「ナルト元気か」
「我愛羅!」
我愛羅が傍に寄るのに、ナルトは満面の笑みで近寄ろうとするが、我愛羅が制しナルトはその場にあったベンチに座った。
「どうだ腹は。大分大きくなったな」
「時々腹を蹴ったりして来るな」
「ナルトに似て元気な子だな」
「ハハッどうかな」
そこからは無言が続き、ナルトは吹雪く砂を見詰めた。我愛羅との無言は心地好く、だが何処かネジを想う気持ちは消えなく、其の儘吹雪く砂を見詰めると突然我愛羅が立ち上がった。
「もう行くのか?」
「ああ…俺も忙しくてな。それでナルトお前に客人だ」
客人と言われ自分に客人等来た事は無く、色々な人に知られ面会謝絶な病室に客等と疑問に思うと、目の前に人が立つ気配に顔を上げた。
「良くも俺の前から逃げてくれたな、ナルト」
その知った愛しい人の声に勢い良く顔を上げると、いつもの不敵な笑みを浮かべたネジが腕を組み立っていた。
「………ネジ」
ナルトの返しに無言が続く。少しの無言をネジが破りナルトへと疑問を問うた。
「何故逃げた……そんなに俺は頼りないか…!お前を支えられない程に頼りないか」
「……ちがッ!俺はネジが影で悪く言われない様にって!!」
「お前の隣に立つなら悪く言われ用と関係無い。そんなの耐えてみせる。お前は火影になるんだろう……それを支える男に俺は成りたい」
ナルトは潤む瞳でネジを見詰める。
「……俺と家族になってくれ…ナルト」
ナルトはネジを勢い良く抱きしめ、ネジは優しく壊れ物を扱う様に強く腕を回すとナルトの肩に顔を埋める。
ナルトが声を上げ泣く声を聞きながら、ネジも気づかれ無いように涙を流す。肩が濡れる心地にナルトは気付いたが知らないフリをする事にした。
ネジは思う。やっと手に入れた自分だけの太陽があの日泥酔した時がチャンスだと思い、酔ったフリをして妊娠する程に抱いたのだ。そして眠るナルトに自分の中に宿る暗く重い独占欲を抱きながら、その思いが見に宿る様に腹にキスを落とした。此奴は誰にも渡さない、この太陽は誰のものでもない自分だけのものだ、と暗く渦巻く思いを抱き、ナルトの腹に宿るようにキスを重ねる。その思いが今宿ったのに抱きしめながら笑む。自分の想いは形になったのだ、と。
その後木の葉に戻った二人は、周りに祝福されサクラに手加減し一発殴られたネジは頬を摩りながら涙を流す彼女にナルトが慰めた。
その後子供が産まれ幸せ一杯な想いで、過ごし翌年も子供が産まれ二人の子宝に恵まれた。
その後子供が落ち着き、対戦の後里の英雄になり火影になったナルトはネジと支え合いながら木の葉を建て直し、幸せに暮らしたのだ。