未定◇終わりから始まる未来
土砂降りの雨が、冷たくなっていく体を打つ。何が起きたかは分からなかったけれども、それはほんの一瞬の、視界が暗転した隙に起こった。
その日も、いつも通り朝日も昇りきらない内から職場へと向かう通勤路を走っていた。そう。いつもと変わらない光景。ただ少し、いつもより雨脚が強いだけ。そう思っていたのに。突然指先から力が抜けて、ハンドルを握っていられなくなった。まずい、と思った次の瞬間には視界が揺れて目の前が真っ暗になった。
強い衝撃。全身を襲う激しい痛み。それから、車外に投げ出されて……。
三十年弱の俺の人生は、唐突に終わりを迎えた。死因? 繁忙期に病休とか言って休みを取る同僚の代わりに出勤を続けたことによる、疲労からの意識喪失による単独事故。ガードレールを突き破って崖下にまっさかさま。加えて車通りの少ない時間だった故に遅れた発見。まあ、事故を起こしてすぐに身見つけてもらったところで生存できる確率なんて雀の涙ほどだったのだろうけれども。
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