無題自分でも、どうして名前を呼んだのか分からなかった。
「んー?」
頬杖をついて少し横に傾いた顔に乗ったふたつの瞳が、伺うようにこちらを見る。お互いが別のオーディションに参加するから暫くは会えない。お互いがんばろう。話はそれで終わった。窓から差し込む暖かな光がふわふわと触り心地のいい髪を透かしている。続く言葉が無いことを疑問に思ったのか、なんなのか。1本の指が自分に向かってきたことに気がつき無意識に身体を後ろに仰け反らせた。
「心配しなくていいんだよ、ホッケー」
「しんぱい」
「うん。……違うの?」
逃げた自分を追うように、明星の指が自分の鼻をつついた。
心配。
果たして自分は心配しているのだろうか。全貌がよく分かっていないオーディションとはいえ、明星も衣更も既にデビューしているアイドルだ。経験も実力も劣ることは絶対にない。リーダーの自分が胸を張って送り出せる素晴らしいアイドルたちだ。分かっている。それは全く……は、言い過ぎなのかもしれないが。心配はしていない。はず。
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