いい加減我慢するのやめてくれ「朝からむすっとしているな、丹恒」
「…うるさい」
とある月曜日。登校する前から丹恒はむすっとした表情をしていた。自分でもわかっていたことだが改めて指摘されると益々気分が悪い。指摘してきた兄─丹楓はそんな丹恒を見てけらけら笑っている。不機嫌の原因を知っているからこそ笑っているのだが。
「また、手繋ぎだけで終わってしまったのだろう?お前の彼氏は随分奥手だな」
丹楓の言う通り、丹恒の彼氏─刃は随分と丹恒を大事に大事に扱ってくる。付き合い始めて半年近く経過するもデートはするものの手を繋ぐ以上のことまで発展していない。同年代と比べ大人びているが丹恒だって健全な男子高校生だ。お付き合いとなれば手を繋ぐ以上のことを期待する。そんな期待を裏切って刃は全く手を出してこない。最近、刃の刃は不能なんじゃないか、刃の感情は死んでるのではないかと変な心配事ができてしまっている。
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