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    bluetiarakureha

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    2014年頒布「クレバーな僕ら!青学編」より
    その①
    最初は手塚くんメイン。

    青学マネージャーはデフォルト名:姫野ゆりになってます。
    なんというか、色々THE夢小説という感じです。
    往年の夢小説感がすごいです。
    読んでてすごく恥ずかしいです。
    色々すいません。
    当時、本をお手に取って下さった方、本当にありがとうございました!

    「まずいな。随分遅れてしまった」

     そう呟きながら、手塚は校舎を出た。
     校庭で陸上部が活動しているのを横目に見ながら、小走りでテニスコートへ向かう。
     今日は生徒会執行部の集まりがあったため、手塚は部活に遅れていた。
     生徒会長として、一度きりの文化祭の開催に着手し始めていた。日程は既に決まっており、今はそこに向けてひたすら準備を進めるだけだ。そのためテニス部に合流するのがここ数日遅れ気味になっている。文化祭の開催が近づけば近づくほど、ますますそれは顕著になっていくだろう。
    手塚はそれを理解した上で、二つの役職を兼任しようと決めたのだから、何としてもやり抜きたい思いだった。
    テニス部の方は副部長の大石が仕切ってくれているからあまり心配はしていないが、ほんの少し、後ろめたさがあるのも事実だ。

     やっと到着したテニスコートには部員が誰もいない。
     部活は既に終わったのだ。
     まだ誰か残っているだろうと思い、手塚はそのまま部室へと足を向ける。
    (電気がついてる―――)
     部室のドアに手をかけようとした瞬間、ドアが開いた。
     手塚が驚いて顔を上げると、不二がそこに立っている。
    「あっ、手塚! よかった、今ちょうど君を呼びに行こうとしていたところだよ。ゆりが大変なんだ」
    「……どうした!?」
     不二の只ならぬ発言に、手塚は慌てて部室へと入った。
     部室の中央には、リョーマと桃城、それに大石と乾に囲まれ、真ん中にゆりが座り込んでいる。
    マネージャーのゆりは何故か制服のボレロを脱いでいて、セーラーブラウスのリボンも解けていた。目元は呆然としていてどこを見ているか判らず、一見すると高熱に浮かされているようにも思える。
    手塚は普通じゃない彼女の姿に慌てて駆け寄った。
    「ゆり? どうした?」
     心配そうにゆりの顔を覗き込み、赤く上気した頬にそっと触れる。するとそれに応えるようにゆりは手塚の首に両手を絡み付けた。
    「え、ちょ…ゆり、」
     突然のゆりの行動が呑み込めず、手塚は絡みついた両腕を解こうとして、そのままキスされてしまった。
    「んっ、コラ、ゆり…!」
     と、そのまま全体重を預けてきたゆりに押し倒されるようにして、手塚は床に倒れ込んだ。
    「ど、ど、ど、どうしたんだ!? 急に!?」
    「国光……」
     手塚に馬乗りになったゆりは、熱で浮かされたように潤んだ瞳で手塚を見下ろしている。
    その姿がまるで情事中の彼女と重なって、手塚は思わず下半身が反応しそうになってしまう。
    が、とはいえここは部室で、その上周りにも他の部員もいる。
    この体制が大変美味しい状況であるにも関わらず、普段のようにゆりを押し倒し返すことは許されない。
    「な、なななななにがどうした…!?」
     顔を真っ赤にして手塚はゆりを見上げた。と同時に周りで見ていたメンバーが、その様子を実に楽しそうに眺めていることにも気づく。
    「いや~~~俺、手塚部長のラブシーン見たの初めてだぜ」
    「誰だって初めてっスよ、桃先輩」
    「コラッ! 見るんじゃない、お前たち!」
     桃城とリョーマは、一生見ることはないはずの「手塚部長」のラブシーン(しかも女に押し倒される)を余すところなく凝視する。
     大石が二人の前に立ち塞がって手塚たちの姿を見せないように奮闘しているが、ほとんど意味はなさそうだった。
    「姫野! お前も早く上着着ろって!」
     一人慌てている大石を横目に、不二は「ハア」と大きくため息をつく。
    「だからね、手塚……。このゆりの状況が大変な事なんだって」
    「だから、どういう事なんだ!?」
    「いや、実はさっきさ……」
     と、不二はこの状況が起こったきっかけを話しだした。





    「姫野、これなんだが」

     乾がゆりの目の前に紙コップを差し出す。ゆりはそれをキョトンとして見つめた。
    「えっ? なあにこれ?」
    「女性向けのドリンクを作ってみたんだ。乙女の美容と健康のために、をコンセプトに仕上げてみた。試飲してみてくれないか」
     手塚が不在のまま部活は無事終了し、部室で各々帰り支度を始めている中、乾はゆりに新作のドリンクを差し出した。
     とはいえ、乾が出してくるもので、これまでまともだった事など一度もない。それが記憶に刷り込まれているゆりは、簡単にこの紙コップを受け取って良いのか躊躇う。
    「え…つまりこれ、乾汁ってことでしょ……?」
    「なに、それほど怯えることもないぞ。今回は本当に大したことないんだ。成分はコラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタにビタミン群が主な成分になっている。普段より格段に優しく飲みやすいぞ」
    「それっていつも作ってるのがかなり酷いものだって自覚してるってことじゃないの…。それで……味は?」
    「ピーチだ。女性が飲みやすいようにな。今回は本当に美容サプリのつもりで作ってみたんだ。心配いらない」
    「そこまで言うなら……いいけど……」
     ゆりは乾からためらいがちに紙コップを受け取り、しばらくその容器に入った液体を眺めた。
     色は透き通ったピンク色。
     異臭もしない。むしろ桃の良い匂いがするくらいだった。
    (これなら大丈夫かな…)
     と、ゆりはそれを全部飲んだ。




    「という訳でさ」

    説明してくれた不二から視線を移し、手塚は実に険しい顔をして乾を見やる。
    今聞いていただけでは、特に変な成分が入っているようには思えない。だがゆりの様子を見ると明らかに良からぬものが入っているのは確かだった。
    「それなら今回の乾汁には別に変わったものは入ってないのだろう? 何故ゆりはこうなったんだ?」
     手塚は相変わらずゆりに馬乗りされたまま、乾の話を聞いて思考を巡らす。 
     なにせあの乾だ。
     こっそり変なものを全く入れていても不思議じゃない。そして、それを飲ませる相手がゆりならば、簡単に丸め込めるもの事実だ。
     部員のことを信頼しきっているゆりならば。
    「乾…。お前、何か隠してないか?」
     ビクッと乾の肩が震える。
     ほんの一瞬だけだったがそれを手塚は見逃さなかった。
    「おい、乾…」
    「んー。い、いやぁ…実はだがなぁ…」
    「乾、はっきり言え。何を入れた?」
     気まずそうに黙り込んだ乾を、手塚は睨むという言葉が当てはまるほど、じっと凝視した。手塚にすごまれて、ほんのり乾の顔には冷や汗が浮かぶ。
     ゆりは相変わらずとろんとした目をしながら、手塚の学ランのボタンに手をかけ、ゆっくりとした手付きで一つ一つ外し始めた。
    「……乾!」
     手塚は相変わらず乾を睨んだまま、手元でゆりの手を止めようとする。が、女の子に対して全力で抵抗するわけにもいかず、そのままどんどん手塚はひんむかれていってしまった。あっという間に学ランは脱がされ、今度はYシャツにまで手が掛かり始めている。
     乾は大変言いにくそうに呟いているが、なかなか結論を言わないので一向にらちがあかない。
    「いや~少しだな…、女性が大胆になるようなものをだな…」
    「いぬい…!!」
    「まあ簡単に言えば、―――合法の興奮剤だ」
    「おまっ、なんてものを…!!」
     それ以上、手塚は怒りで声が出なかった。
     なんてものを入れてくれたんだ、この男は。いや、それ以上に何てものを女の子に飲ませるのだ。
     手塚の服をなかなか脱がせなくて、しびれを切らしたゆりはとうとう自分のブラウスに手をかける。戸惑うことなく、左脇下のファスナーを上げた。
    「コラ―――!!」
     ゆりが勢いよくセーラーブラウスを脱ごうとして、寸での処で手塚が抑える。
    「あ~部長! もうちょっとで見えそうだったのに、そりゃないっすよ~!」
    「ふざけるなよ、桃城。お前らに見せるわけがないだろう!」
     といいつつ、実はしっかり手塚の位置からはゆりの下着が見えていたのだが、他の男に見せるつもりなど毛頭ない。
    「どうして? 国光は私のこときらいなの…?」
    「え? いや、ゆり、ち、違うぞ。そういう事じゃなくて…」
    「じゃあ、好き……?」
    「いや…だから、それは…」
     ずいっとゆりの顔が手塚の目の前に迫る。
     こんなに大勢の部員が見守っている前でする話じゃないが、今のゆりに誤魔化しは通用しない。
     なかなか返答をしない手塚に、
    「…好きじゃ、ないの…?」
     ぽろっとゆりの瞳から涙が零れた。
    「ああ、もう、そうじゃない、そうじゃないから泣くなって……!」
     乾に変なものを飲まされたゆりは既に正気じゃない。
     いつも以上に手塚に甘え、求めていた。
     どうしてこれが二人きりの時じゃないんだと、手塚は内心ごちる。

    「わあ…あの手塚がこんなに慌ててるよ。ゆりの前だと君もてんで形無しなしなんだね」
     手塚の上でくすんくすんと泣き始めたゆりを、大慌てで慰めようとしているその手塚の様子があまりに彼の通常運行を外れているので、不二は思わずそう呟いた。
    「不二! 楽しんでないで、ゆりの上着を取ってくれ」
    「はいはい。もうしょうがないなぁ」
     不二はそばに脱ぎ捨てられたゆりのボレロを拾い上げる。軽く埃を払って、ゆりの肩にかけてやった。
     乾はいつの間にか取り出した大学ノートに、何やら一生懸命書き込み始めている。
    どうやらこの新作乾汁の成分を照らし合わせて、今のゆりの状況と結果をメモしているようだ。
    「ふむ! これは今月最大の成果だ。今後の参考にしなければ……命名はそうだな……【乙女汁】にしよう!」
    「乾! いい加減にしろ…!」
    「手塚、俺たちのことは気にしなくていいぞ。もう帰るから、後は存分に続けてくれ」
    「…なっ…! 乾、お前な!!」
    「そうだよ、手塚。もう泣いちゃってかわいそうだよ。ゆりのこと、慰めてあげて」
    「不二…お前までふざけるなよ…。というかそもそも乾が原因じゃないか」
     リョーマと桃城は、大石に強引に引き連れられ、すでに部室を出て行こうとしていた。これ以上この場にいたら、今後の部長の威厳に関わると判断し、二人を引っ張っていったようだ。
     手塚は三人を見送り、視線を移して帰り支度を始めた乾と不二に声を掛けた。
    「乾、ゆりはどうしたら元に戻るんだ?」
    「そうだな…姫野の欲求を満たせば、元に戻るだろう。普段は理性で抑えている欲望を拡張させる効果のある代物だからな」
    「そうか。もういい、判った」
     手塚は大きく一つため息をついて、チラリと不二に目配せした。もう不二と乾にも帰れと暗に示しているのだ。
    「ほら、乾。もう僕達も帰ろう」
    「ま、そうだな。先が気になるところではあるが」
    「そろそろいい加減、やめといたほうがいいよ。じゃあね手塚、ゆり」
    手塚はそれに応えるように後ろ手で手を振った。
    パタンと静かにドアの閉まる音が聞こえる。
    「さて……」
     手塚はゆりに向き直ると、他の部員の目から隠すように自分の腕の中に収めていたゆりを見つめる。
    不二の掛けてくれたボレロの隙間から、肌蹴たセーラーブラウスが見えた。手塚はゆりの髪をそっと撫でながら、改めて抱きしめた。
    「もう泣くな。俺はお前に泣かれると、本当にどうしていいか判らなくなる」
    「国光…」
    「頼むからもう他の男の前で脱いだりしないでくれよ」
     そうして、続けて手塚はゆりの耳元で囁く。
    「俺の前だけにしてくれ」
     手塚の唇が、ゆりの唇にそっと触れる。
     それに応えるようにゆりは両腕を手塚の首に巻き付け、キスを受け入れた。
    「帰ろう。もうこんな時間だ」
     手塚は側に転がっていた自分の荷物を拾い上げ、ゆりにも彼女の鞄を手渡す。そして、ゆりの手を引いてドアへと向かい、ドアノブに手を掛けようとして、不意に手塚は立ち止まった。
    隣に立っているゆりを見下ろす。

    「俺んち、寄っていくか?」

     そう囁いた手塚の瞳がやけに色っぽくて、ゆりは少し赤くなりながら頷いた。


     なお、この新作乙女汁が手塚によって発禁になったのは、言うまでもないことである。




    END
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