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    仁川にかわ

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    仁川にかわ

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    あくまで個人の感想です。
    過去ストーリーは再読しましたが、もしかしたら細かいところ齟齬があるかもしれません。ご容赦ください。
    明日には言ってること変わってるかもしれません。

    ブラネロ賢者による、希望的観測とその根拠について○ブラッドリーの矜持とは

    ブラッドリーをブラッドリーたらしめるものは即ち「矜持」である。カード特性に頻出するように、矜持とは北の国の魔法使いにとって、そしてブラッドリーにとって一際重要な単語だろう。
    では彼の矜持とは何か。

    1.北の国の魔法使いについて
    北の国では強さこそが正義である。そして、強くあろうとすることが生きることでもある。息を吸わねばならないように、戦い続けなければならない。それは生まれた時から刻み込まれた強固な行動原理である。
    強くあることは、自由を手に入れることでもある。それがプライドの高さに繋がっているのではないだろうか。
    勝つことは強さの証であると同時に生きる手段でもある。奪わねば奪われる国で戦わない選択肢はないに等しい。戦わなければ死ぬだけなのだ。
    負けるにしても、ただ無抵抗でいることは誇りを損なう。体に傷がつくより、誇りに傷がつくことの方が彼らにとっては耐え難いことである。
    戦う理由としては奪われぬため、強さを証明するため、自由を手にするため、それらは「生きるため」に集約される。
    現北の国の魔法使いは闘争を好む。それは、力と力をぶつけ合うことが何よりも高揚することだからではないか。己の自由を示し、存在を示し、手足を大きく広げる。それこそが冷たい大地でも血を熱くさせられることなのではないか。
    彼らにとって生きることとはただ命を長らえるという意味ではないのだろう。

    2.ブラッドリーの出自について
    父親が魔法使いであり、大家族であったことから、自然と「自分以外の存在」に触れる機会が多かったと推測される。「手当たり次第女を孕ませて」との発言から、兄弟は皆腹違いであると仮定する。このことから、生まれついて多種多様の人間に囲まれて育ったブラッドリーは人を見る目が肥えたのではないだろうか。また、他者の扱い方を心得たのではないか。
    そして父親が魔法使いであることと兄弟が人間であることから、身近な者の死を魔法使いと人間と両方経験している。それらがどのようなものであるかを早々にブラッドリーは知っていた。
    父親が後継者を求めたことを知りながら、学び、石になる瞬間を見た。歳上の兄弟が死ぬのを見た。それに喪失感を抱くも時の流れにより忘れてしまった。このことから、忘れ去られることの容易さを知ったのではないだろうか。
    大勢の血族が死にゆく中生き続けるブラッドリーは、孤独を抱いたのだろうか。

    3.盗賊団について
    ブラッドリーは盗賊団を率いた理由として「働きたくないからだ」と語ったが、真意としては「働くことが無意味だから」と察する。奪い奪われが常識である北の国で、労働と報酬が等価であるとは考えにくい。故に、より確実なのは力でもって奪うことだ。
    一人でも生きられるブラッドリーが集団のトップに立ったのは、個人的な考察として「己を知る者を増やすため」が一つあるのでないかと推測する。上記のことから忘却の容易さ、執着できないことの虚しさを知ったブラッドリーは世界と関わる手段として「その名を轟かせる」ことを選んだのではないだろうか。
    また、這い上がった者である自覚のあるブラッドリーは、同じほど這い上がれる者を求めていたのではないか。
    それぞれに己の存在を刻んで、世界に存在を刻む。幸いにも出自から他者を率いる才能を培ったために取れた手段であった。その異質さは目的に、より効果的だったと思われる。

    4.ブラッドリーの自己矛盾について
    ブラッドリーは自分の行動原理、思想、論理を言語化することが得意である。確固として築かれた芯は、ぶれぬようかき消されぬよう、存在定義を確かなものにするにあたって必要なものだった。
    しかし彼はしばしば自己矛盾を抱えている。ブラッドリーが認識し、ブラッドリーの語る内容に行動が伴っていない事例がちらほらとある。それは意図してのものではなく、そもそもブラッドリーが自分の真意を誤認しているからだろう。もしくは細かな差異を認識していないのではないか。
    ここからはあくまで個人の主観になるが、例を挙げると「ネロに抜けたら殺すと脅していたこと」などがある。
    他の手下にはそうしていなかった。そして、再会後も殺すことはしなかった。建前としては「秘密を知りすぎているから」。しかし、それは他の手下にも言えることではある。本当に抜けたら殺すつもりがあったかどうかは現時点で定かではないが、現状それに至っていない。
    これが一つ目の言動と行動の矛盾である。
    二つ目の例は、これもブラネロを軸にして考えた対比であるが、ローレライイベントより「何もかもを見限れるほど(その魚を)愛しているのか」という問いについてである。
    ブラッドリーは一時凌ぎで閉じ込めても、いつかはそれを捨てることになり、それは宝の持ち腐れだと発言している。
    しかしブラッドリーはネロを側におこうとしておきながら矜持や信念、生き方を捨てず、一時凌ぎの甘言で宥め、ネロを閉じ込めていた。離れてしまうことを危惧しての監禁だと思われるが、これこそ宝の持ち腐れである。
    他者の唯一へ正論を語りながら、己の唯一にはそれを実行できていない。これが、二つ目の矛盾だ。
    一つ目の矛盾は、ネロを殺したくない、死なせたくない、という本音を覆い隠したがために生まれたものだ。うっすらと自覚してはいたのだろうが、ネロを繋ぎ止める手段に脅迫を使った故の矛盾である。これは、確実な手でないことはブラッドリーとて理解していたのではないだろうか。殺せないのなら、脅迫は脅迫たり得ない。確実を取るのなら、最善策ではない。ここには力で全てを手に入れてきた実績と、力では手に入らぬものがなかった経験不足が関係していると考える。ましてや、人の心は力で奪われるものでもないために「奪われないために奪う」ことができない。他の手段を知らなかったブラッドリーは、知る手段を取る他なかったのだ。
    二つ目の矛盾は、そも矜持や信念はブラッドリーそのものであり捨てるという概念がなく、ネロが離れていくという未来を想像しなかった、または想像したくなかったために起こったのではないだろうか。
    憔悴し着いていけないと溢すネロを無理矢理繋ぎ止めるのはブラッドリーにとっても恐らく本意ではない。求めたのは過去の再来だった。時が戻らないことを知りながら、今はもう存在しない過去を手にしようと足掻いていたのではないだろうか。存在するものであれば手に入れる方法は探せるが、存在しないものを手に入れようとしても今あるものを損なうだけである。「今あるもの」とはネロのことだ。つまるところ、ブラッドリーは目の前にいるネロを見ることができていなかったのだ。

    5.ブラッドリーの執着について
    出自より、執着することができないブラッドリーが、初めて執着することができたのがネロではないか、と私は思う。短命を理由に執着できないのなら、同じ長命の魔法使いならば人間のように瞬く間に死にゆくこともない、と考えるものではないだろうか。
    ブラッドリーは物に対しての執着も浅いように思う。手にした宝を奪われることは我慢ならないが、賭け金として使うことに抵抗がない。価値のあるものであれば、「それ」でないとならない理由はないのだろう。
    思うに、ブラッドリーの目的は宝ではなく「価値あるものを奪うこと」自体にあるのではないか。
    換えが効かないもの、形あるもの、意思を持つもの、そういった存在がネロであり、初めて執着できた相手なのだ。
    しかし、それは過去からの引用ができないことでもあった。無い経験は糧にならず、糧のない執着はきっと歪であっただろう。だが、それを正すものも間違いだと諭すものもいない。数百年間歪んだまま育った執着は深く根を張った。
    離れようとするネロへの二転三転とするブラッドリーの態度を細かく見ていくと、そのどれもがネロの真意、本意に触れていない。
    ・わかりやすく仕置きをする
    ・デメリットを提示する
    ・煽る
    ・脅す
    ・その場凌ぎで宥める
    ・懇願する
    ・上の立場から圧する
    ・時間を置こうとする
    ・逃げ場を封じる
    ・情に訴える
    二種類に分類すると、「上からの交渉(=仕置きや脅しなど)」「下からの交渉(=懇願、宥めなど)」に分けられ、中間がない。二人の関係性は相棒のはずなのに、対等な目線での交渉がないのである。
    ネロの訴えは一貫して「死ぬな」、それだけだ。言うことを聞いて欲しいわけではないのだ。より詳細な真意は「死なないでと願う心を知って欲しい」だと考えている。
    そうすると、「忠告を聞く」や「今まで大丈夫だった」「言うことを聞く」はピントがズレた説得なのだ。
    何故ピントがずれるのか。はっきりと「死んでほしくない」と言われても尚噛み合わないのか。
    それは、ブラッドリーにとって「死にかける」ことは「生きる」過程で生まれるものであり「死ぬこと」ではないからではないだろうか。
    これが北の国の生き様であり、この認識の違いがネロが北の国で生きてはいけないと悟った理由にもなるのだろう。

    *まとめ
    六百年以上を生きた者の矜持を言語化することは無粋であるかもしれないが、これらのことから、ブラッドリーの矜持とは「己が己であるまま生きること」と私は考える。反対を言えば、「己であることを保てないならば死んだものと同じ」となる。
    強さに挑むのがブラッドリーで、欲しいものに命を賭けるのがブラッドリーである。
    死の淵に触れて尚戦うのが、生きることである。誇りである。
    それが矜持である以上は、ネロの望む平穏を、過去のブラッドリーが享受することはなかっただろう。

    ○ブラッドリーの進化と百年の孤独
    盗賊イベストにて、ブラッドリーがネロに頭を下げるシーンがある。「これが俺の進化だ」と語るブラッドリー。
    ここから、晩酌を断り続けていたネロが応じるようになるのですが、単純にあのブラッドリーが頭を下げた、という理由ではないと感じている。
    目的のために、力尽く以外の手段を取った。それこそがネロの心の壁を少し薄くしたのではないだろうか。手に入れるならば奪うか拾うかが好ましいと語るブラッドリーが、頭を下げるという交渉をする気になったというのは、過去のブラッドリーを知るネロからしたら衝撃だったのではないだろうか。
    ブラッドリーは孤高であったが、孤独ではなかった。盗賊団の一員である兄弟たちがいたこと、そしてネロがいたことで孤独を忘れていた。
    だが投獄により孤独を知り、思い出した。「一人になってやっていけなくなったのは自分の方なのではないか」と語るシーンがあるが、この場合の「やっていけなくなった」とは世界と繋がっていない虚しさを覚えた、ということと解釈する。
    満たされていたはずの器から、中身が零れ落ちていく感覚を味わったのではないだろうか。
    五百年強、人生の殆どを共にした相手の喪失は血肉にした思い出が幻だったかのように感じたのではないだろうか。そうすると、地に足をつけ、重くあらねば吹き飛ばされる北の国では、足元が揺らいでしまうだろう。
    ブラッドリーがブラッドリーであるための、その中身を再び満たすためにメインスト、並びにイベストでネロを誘ったのだと思われる。
    しかし次第にその形は変化を遂げた。
    魔法舎で過ごすうちに、ネロの北以外での生き様を目にしたことが大きく関係すると考える。
    ネロの描いた夢物語を目の前にして、その中にいるネロを目にしてブラッドリーは何を感じただろうか。
    自分の全てを明け渡そうとまで思った相手が、自分とは全く違う者であったと感じたのだろうか。
    ネロが共に生きることができないと思い知ったように、共に生きることはできまいと考えただろうか。
    ならば、どうだろう。ブラッドリーにとって、共に生きることができず、夢から覚め、片腕でもないただのネロはどう表されようか。
    そこには単純で純粋な心しか残らない。
    嫌われていたくないと感じて、昔のように話ができたら嬉しくて、ネロの心が傷つくことを恐れたりして。
    それがスプーンで語られた内容に繋がるのではないだろうか。
    なごやかさを好ましく思い、時に憧れ、眺めているが、そこは自分の居場所ではない、と。
    平穏に憧れを持つようになったのは恐らくネロが平穏の中にいるのを見てからではないだろうか。「変わればよかったのか」と賢者に問いかけた通り、その平穏の中で暮らすことができたなら、ネロと生きることが出来たのではないかという憧れ。
    しかし、結局、ブラッドリーはブラッドリーでいることをやめられない。だから「自分の居場所ではない」と言うのだろう。
    「あり方を変えたいならば命懸けで挑め」と語るブラッドリーを「そういうところがいいところで悪いところ」と返すネロ。正真正銘、ネロは命懸けで挑んだ。挑んで、変えられなかった。あり方を変えないブラッドリーを嘆くと同時に、きっと、だからこそ彼は彼なのだと感じたのではないか。
    これで終わりではない。
    ブラッドリーは進化している。変化ではなく、進化。元あるものの形を変えるのではなく、元ある形のまま、新たな武器を身につける。
    六百年は人間にとっては果てしない長命である。しかし、魔法使いにとってはその限りではない。六百年生きて知らぬことがあるように、これからブラッドリーは進化しようとしているのだ、と私は期待している。
    「元」相棒、の称号に終焉を感じる方もいるだろうが、一度終わりを迎えたならば新たな始まりがある。これは、カンペッジオイベントで抱いた感想である。
    良くも悪くも「相棒」という言葉に縛られていた二人が、「多分一応だいたい仲間」という新しい関係性を見出した。
    進化する新しいブラッドリー、心の重荷の拠り所を見つけた新しいネロ、新しい関係性。それは、過去の繰り返しではなく新しい未来へ続くものではないだろうか。

    ○現在のブラッドリーとネロ
    これは再会当初から言えることだが、彼らは湿っぽく重苦しい空気と軽やかで楽しげな空気を交互に切り替える。どちらも本物であり、ゼロにならないが、溶けあわないから温度差を感じるのだ。
    新しい関係性を見出して以降、ネロはブラッドリーを隠さず「ブラッド」と呼ぶ。反して、ブラッドリーはネロのことを時折線引きするように「東の飯屋」と呼ぶ。そこには、ネロの願う平穏な景色を踏み荒らしたくない、という不器用な優しさが含まれているように感じた。
    頑なだった心が反転したようにも見える。その実、蟠りは僅かながら溶けつつあるというのに。想っているからこそ、足を踏み出せないのだ。ブラッドリーは、今度こそネロのことを大切にしたいから、慎重になっているのかもしれない。
    戦いに赴く際、「北の魔法使い」然として「東の飯屋」とネロを呼んだのはそういう意図があったりはしないだろうか。

    ネロはと言えば、カンペッジオラストで「泣く子も黙るブラッドリー様だぜ」という台詞に「知ってるよ」と笑って返している。これは、ブラッドリーが簡単に死ぬ男ではないと少しでも思えたからではないだろうか。
    セカンドアニバストより、乾杯を前に戦いに向かうブラッドリーへ、これだから、と呆れて見せた後、黙ってしまう。その後の乾杯の言葉として「同じ時は二度と戻らない」を選んだ。それは、相棒でない今、「北の魔法使い」であるブラッドリーを「東の飯屋」であるネロが止められはしないと思ったからだろうか。それとも、矜持を重んじるブラッドリーをかつてのように咎めまいとしたからだろうか。
    ネロは怪我をしたブラッドリーをため息混じり、苦笑混じりに手当をしていた。苦笑とは言え、立ち絵も口元に笑みを作っている。これは大きな変化だと言えよう。相変わらず死にかけるブラッドリーに呆れ、そんなブラッドリーを見送った自分に呆れただろうか。
    死にかけても、死なず戻ってきたブラッドリーを見て、この男はそういう男だと思えて、苦笑したのだろうか。ブラッドリーがどういう男で、どういう生き方の男かを今更落とし込めた自分を滑稽に思ったのだろうか。少なくとも、ただ悪感情ばかりではない。

    ブラッドリーはネロを、追いかけても手に入らないのだと言った。流星を掴めないように、と。生涯を明け渡す夢想を、午睡の夢の言い切った。これは悲観的にも捉えることができれば、良い方に捉えることもできる、と私は思っている。
    明け渡すことを諦めた。それ自体は良いことではないかもしれない。けれど、全てを背負わされ、受け取りたくない命の行先を預けられたネロはもういないということでもある。
    ネロが追いかけても手に入らない流星だとして、どうしてブラッドリーはネロの元へ帰ったのだろう。追いかけていたいからではないのか。いつか掴むことを諦めたくないからではないのか。
    これは言葉遊びになるが、流星はshooting star、「撃ち落とす星」である。そして、ブラッドリーの魔道具は銃。掴めなくとも、星を撃ち落とせる日が来るのではないかと希望を抱きたいものである。
    ブラッドリーがボロボロになってまで、席に座り、フォークを持ち、ネロの料理を食べようとしたのはネロの大切にしているものを大切にしようとしたからではないだろうか。過去の発言から推測するに、ブラッドリーは当たり前のように与えられた環境にありがたみを忘れてしまった。だからこそ、ネロが大事にしているものを、自分が矜持を重んじるように守ろうとしたのではないだろうか。スポエピからも、ブラッドリーがネロの理解できない部分を理解しようとする描写がある。ネロを理解する、重んじる。それが行動として現れたのがこのシーンではないだろうか。

    ○元相棒のこれから
    魔法使いの寿命は長い。綺麗に終われたはずの幕引きが上手くいかなかったり、終わった舞台の続きが描かれたりもする。消えては生まれ、離れては巡り会う。ブラッドリーとネロは六百歳。長寿の魔法使いとしてはまだ若い部類に入る。
    雨垂れが石を穿つように、少しずつ、少しずつ、永遠のような時間がかかっても、あの世界に彼らがいる限り伸ばした手が触れ合う日があるのではないか。正反対に走っていても、世界が巡るように、いつか向かい合うのではないだろうか。
    昨日の彼らは今日の彼らとは違う。明日の彼らは今日の彼らと違う。不変が無いことは嘆くことではないのだ。変わるからこそ傷つくが、変わるからこそその傷を撫でられることもある。

    元相棒の未来に期待!
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