さようなら、カーテンコール 初めて燐音くんの故郷の話を聞いた時、絵空事みたいだなと思ったのを覚えている。画面の向こう文字の向こう、そういう場所にあるような話で。その顔色と声色から、きっと本当なんだと確信していたけれど、だ。結局その時どういう反応をしたのかは覚えてない。
絵空事みたいだと思ったことを覚えているのは、今もそう思っているから。架空の世界のような村は、いつだって僕には思い描けない場所だった。
だからそんな燐音くんの故郷が、どんな場所でどんなところなのか、本人にちゃんと聞いてみようと思ったのだ。数年経った今、この狭いアパートのキッチンの前で僕らのこれからを考えていて、ふと。
「燐音くんの故郷ってどんなところ?」
思い立ってすぐ、キッチンにある棚から昼ご飯の材料を取り出しつつ、リビングでテレビを見ているであろう燐音くんに向けて話しかけた。
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