流石に子猫は恥ずかしい「――お一人かしら?」
薄暗い照明。町はずれのオーセンティックバーの一席。
ぼんやりとグラスの氷を見つめていた時、かつんと、すぐ隣に似たような色の液体で満たされたグラスが置かれた。
甘えたような声と、鮮やかに彩られた長い爪、そして煌びやかな指輪。視線を向けるまでもなく一目で女の手を分かるそれ。
「……連れが来る」
「あら。そっけないのね」
相手も見ずに、ジルは短く答えた。――無視をしなかっただけ自分も丸くなったものだと思うが、無視をした方がよかったかもしれない。つん、と剥き出しの白い肘が、カウンターへの上に置かれていたジルの腕に当てられた。
あくまで座った際に触れてしまった、と言う絶妙な範囲で。
「――じゃ、お連れの方が来るまででいいわ。……座っても?」
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