天を見上げる竜の話「眩しすぎるな」
ベッドの住民、もとい黒髪の青年は薄いカーテンに手を伸ばそうとする。
しかし、息道、肺に冷たい空気が侵入して何度も咳が発された。
背中が丸まりその手は口元を抑えるためにひっこめられ、目尻に嫌でも涙が溜まる。
代わりに隣の椅子に座っていた少女が立ち上がり、ペールオレンジのカーテンを素早く引っ張って窓を隠した。
「ごめん。カーテンすら閉められないなんて」
「気にしないで。今回は運がよかったけど、私だってカーテン閉められないときあるよ」
「たとえば?」
「引っ張ったら、破れたり裂かれたり」
「それは、運というか……カーテンの強度がよくなかったという、か」
咳を飛ばしたときに魂が抜けたのか。
シーツに引っ張られたように青年の背中は倒れて、白い枕に頭を沈めた。
1924