春の訪れ 轟音を立てて淵源雷神龍の巨体が沈む、あれ程苦戦を強いられていたにも関わらず、終わりはあっけないものだった。
カムラの里の猛き炎ことハヤテは、この時をもってして英雄となり果てた。
討伐が終わったというのに彼は未だ高揚感が抜けずにいる、それどころか武者震いも止まらず、本能に突き動かされるまま天に向かって吼えた。それはまさしく勝利の咆哮、ハヤテに感化されたオトモ達もそれに続いて吠えていた。
ひとしきり声を上げれば落ち着いたらしい、大きく深呼吸すれば地に伏した雷神龍の素材を剥ぎ取り始める。
ふとそこで、来るときには付けていた狐面がないことにハヤテは気付いた。はて何処へ落したのやら、きょろきょろと辺りを見渡していればガルクに背中を小突かれる。どうしたのかとその方を見れば、口に狐面を咥えているではないか。
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