若干世界観の説明会と導入のみ。『立てば美形座れば火薬庫、歩く姿は暴風雨』アルスハイル、という生徒は人ではない。人でも無ければ人魚でもなく、獣人でも妖精族でも無かった。
入学式の時に「あれ?こんな生徒いましたっけ?うーん、まあ入学式にいるんですし闇の鏡に選ばれたということですよね!あ、じゃあ入学式終わった後にでもすぐに書類書いて提出してくださいね」と勝手に脳内で自己完結させたアホウドリ……じゃなくて鴉みたいな男に深く追求されることなくそのまま入学式を終わらせたのである。
それでいいのか権力者っぽい男。どうやらガクエンチョーとかいうこの男は多分此処の責任者らしいと周囲の様子からアルスハイルは判断したが、こんなのが上にいるとか色々と大丈夫か?とアルスハイルはちょっと考えた。
しかし『ナイトレイブンカレッジ』という施設とはなんぞ?と首も傾げていたのでとりあえずはまあいいか、ということでアルスハイルも深くは考えずに連れていかれた寮の相部屋で書類に書き込みをしていた。だがその後すぐに提出した書類についてすぐさま学園長から呼び出しを食らうとは流石に予想はしていなかった。
何せNRCに何故か入学してしまったこの生徒は、人でも人魚でも獣人でもない『人化した姿のドラゴン』『異世界産の産地直送』というどう考えても特大級の破裂寸前不発弾みたいな危険物。
知らない地名が書いてあるのに読めるのは何故だと教員たちで揉めまくったのが昨日の事のように今でも思い出せるが、10年100年もついこの間のように話すので当然といえば当然ではあった。
妖精族?なんだそれ精霊じゃなくて?とアルスハイルは思ったが、なんだか面倒くさそうな気配がしたので「ほーん」で流した。後でちゃんと図書室に行って調べたら似てるけど多分違うやつだなーと気がついた後日談。
色々ありながらも知能指数がべらぼうに高いドラゴンなので今ではすっかり馴染みに馴染んだものの、なーぜに人の子(耳とか尻尾とか生えてるやつも含む)の教育機関にいるんでしょうねーと未だによくわかんねえやと3年C組アルスハイル・アルムリフは今日も今日とて陰界でも陽界でもないワンダーランドでボヤいている。
精霊もいなけりゃマナもない、なのに呼吸も術も使える不思議。よく分からないけど便利だからまあいいか、良くも悪くも大雑把なドラゴンはやばくなったら考えるか~しか考えてはいなかった。
なお元いた世界……陰界に住むドラゴンは人の住む陽界のマナを吸収すぎると発狂するという常識もここでは適用されない為、本人は自由に人間観察ができると地味に喜んでいる程度。ちなみに発狂した場合はdead一択しかない。
そうした経緯により、ディアソムニア寮にはある意味で劇物みたいな生徒が入寮してしまっていたのである。