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    nine

    @200009090_nine

    ねこすいたい。

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    nine

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    アネモネさん目線のSSです。

    眠れる夜を抱えて彼は眠らない。
    正確には、体力が切れて気絶するまで眠らない――の方が正しい気がする。
    その習慣は、研究所を出てから顕著になった。
    「アネ〜。」
    寝ようよ。
    私がそう声をかけても、彼は眠ろうとするその動作を一切しなかった。
    「アネモネさん、先に寝てていいよ。僕はまだやらなくちゃいけないことがあるから。」
    そう言った彼の虚ろな目の下には、酷い隈がある。長いこと取れていない、その影。
    普段は隠しているそれが、二人きりの今だけ顔を覗かせる。
    忙しなく手を動かす彼は、一切こちらに顔を向けずただひたすらに作業に没頭していく。
    この様子だと、明日には気絶するかな。
    そう考えながら彼の作業を眺めているうちに、いつの間にか私は眠っていて気づけばいつもの檻の中。
    ああ、彼はいつもそう。
    どんなに自分を追い込んでも、私にはこうして寝床に運んで寝かせるほど優しくするのだから。
    彼は、眠れないのに。
    たまに、気まぐれなのか優しさなのか分からないけれど、一緒に寝てくれることがある。だが――そういう時は必ず、彼は苦しんでいる。
    呻き、呻き声の合間に夢の中でひたすら謝る彼を見るのは辛い。
    気絶して眠りに落ちるときでさえ同じように苦しむのだから、眠ることそのものがきっと恐怖なのだろう。
    一緒に寝ようよって、声をかけても諦めるのはそのせいで。
    ……わかっている。彼がもうとっくに限界を迎えていることを。
    けれども、私には彼を助けることはできなくて。
    私のために全てを捧げる彼に「諦めよう。」なんて言葉をかけるのもできなくて。
    だから、私はただひたすら、彼のそばにいてやることしかできないのが歯痒い。
    「……アネモネさん?起こしてしまったかな。」
    するりと彼の手が私を撫でる。暖かくて、優しい手。
    「……。」
    そのまま彼の手に擦り寄る。そうすれば、彼も応えるように両手で包み込むように優しく撫でてくれる。
    「……アネモネ!」
    愛してる。
    そう伝えれば彼の顔が一気に赤くなり、恥ずかしそうに俯く。
    だがその反応は一瞬で、すぐさま苦しそうな顔になる。
    「……アネ?」
    「……アネモネさん、まだ眠いだろ?ほら、おやすみなさい。」
    そのまま檻の扉を閉められ、ガラス越しでは彼の表情がよく見えなくて。
    ガラス越しに檻の中から小さく声をかける。
    「アネモ、アネモネ〜。」
    ……おやすみなさい、コラプス。と
    けれど彼はそれに気づいた様子もなく、ただ机の上の書類に視線を落としていた。
    少しだけ震えた肩が見えたのは、作業に集中しているせいか、それともーー。
    その答えは、ガラスに遮られて私には届かない。
    それでも、私はいつか届くことを願って、声を重ねる。
    今日も、夜は更けていく。
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