酔いいつからこんなに大事な存在になってたんだろう。
ふと目の前の熊を見てしみじみと思った。いつもの酒場で今日もたくさん注文し、よく食べよく飲んでいる。あんなにあった料理もほとんど綺麗になくなっており、どんだけ一人で食べたんだとボーッと考える。
いびきはうるさいし、すぐに髪の毛をわしゃわしゃしてくるし、ほら、こうやって。この大きな手で。
「酔っ払ってんのか? そんなボーッとして」
ん? と首を傾げて語りかけてくる。
「いや、考え事をしてただけだ」
「考え事?」
どうした? と、わしゃわしゃした手を離しビクトールの視線が一瞬鋭くなる。そんな変化にも心配性だなあ、とくすぐったく感じる。と同時に離れていった手に少し…。
「ああ…いつからお前のこと、こんな風に思うようになったのかな…って」
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