【知らない獣②】異変を感じたのは強敵との戦闘中だった。
風の中に混ざる懐かしいにおい。
肌にピリリと突き刺さるような敵意。
ー 近くに、いる。
よりにもよってこんな時に。
フェルは目の前の稀にみる強敵にチッと舌打ちをする。
巨大なミスリルリザード。
喜び勇んでコイツに突っ込んでいった数分前の自身を呪いたい。
倒した暁には、近くにミスリルの取れる場所があるかもしれないぞ、と自分の主でもあり番でもあるムコーダに知らせれば、「フェルすごい!!ありがとう」と言って喜んで貰えるかも…!?
そんな淡い期待…もとい下心で強敵の気配を探り、フェルは自ら戦闘をしかけたのだった。
(迂闊だった!)
ミスリルリザードの攻撃をかわしながらフェルは舌打ちをする。
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