「プロキオンさん、身体触っていいすか?」
「へっ?」
こんなことプロキオンさんにしか頼めなくて、などというチコを横目に、プロキオンはそっと熱心にスイカをつついているルピナスの耳をふさいだ。
「いや……ええよ、ええけど、そういうのはルピちゃんの前ではあかんよチコちゃん……」
「?そうなんですか?」
「うん……こう、ベッドに行く直前とか、そういうときにしよな……」
「わかりました」
いまいちよくわかっていない様子のチコーニャに、プロキオンは大丈夫かいな、と零す。未だ耳を塞がれたままのルピナスがきょと、とプロキオンを見上げた。
そうして夜、チコーニャがベッドにいるのを見て、プロキオンはその隣に座る。
「チコちゃん、ええよ」
両手を広げてチコーニャにそう言えば、チコーニャが両手を伸ばしてくる。ハグされるのだと思っていたら、ぺた、と腕を触られてプロキオンは瞬きをした。
「……ん?」
チコーニャは至って真剣にプロキオンの腕を撫でたり軽く握ってみたり、本当にただ触って撫で回している。プロキオンはきょとんとしてもう片方の腕を下ろした。
「……触りたいてそういう?」
「?」
「や、気にせんでええよ」
されるがままになろうと、プロキオンは大人しく力を抜く。チコーニャは自分のものとは色々と違うそれに興味津々な様子だ。まあチコちゃんが楽しいならええけども、と思いながら、少しばかり釈然としない気持ちになる。
すりすり、なでなでと腕やら胸を触られるうち、なんだか妙な気分になってきた。そもそも枕を交わすのを前提にした触られ方をするとばかりに思っていたので、悶々としてしまう。
「……」
「すごく硬いですね……」
「なあわざと?わざとなん?」
「?」
きょとんとチコーニャが首を傾げた。プロキオンはぐうう、と唸り声を上げ、肩を落とす。無邪気な性質だとは思っていたが、まさかここまでそれを痛感させられるとは思ってもみなかった。チコーニャの指が胸を撫でる。触り方それ自体にはいやらしさも何もないのでプロキオンは本当に困り果てていた。純粋に男女の身体の違いを面白がっているのである、目の前の少女は。ついにその手が腹を撫でようとしたのでがしりとその手を掴んだ。
「チコーニャ」
「?」
「流石に、まずい」
プロキオンが割と真面目なトーンでそういうので、チコーニャはきょとんとしたまま手を引っこめる。
「まずいって……何がっすか?」
「………………………………まあ……………………色々…………………………」
流石に、正直に答えることは、できなかった。