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    CitrusCat0602

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    CitrusCat0602

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    三竜の話です
    つづく

     扉が開く音にびくりと震える。アマーレとネルシアを守るように背中に隠しながら、ルチーゾはドアの前に立っている研究者をじっと見た。睨んではいけない、敵意を見せた結果どうなるかをルチーゾはよく知っている。気だるげな表情の研究者は黙ったまま部屋の中に入ってきた。単独行動をしているようで他の研究者の姿は見えない。

    「チコ姉は……?」

     アマーレが小さな声でネルシアとルチーゾにそう囁く。次の瞬間彼女の赤い髪が無遠慮に掴まれ強く引っ張られたので、アマーレが悲鳴を上げた。ぶちぶち、と嫌な音がする。

    「アマーレ!」
    「あーーーーーったく面倒くせえ。これだからトカゲ共は嫌なんだ」
    「何すんだよ!チコ姉との約束はっ」
    「んなもん守るわけねえだろ」

     ふん、と鼻を鳴らしながらぐいぐいと髪を引っ張って引きずって行こうとするので、アマーレが痛い痛いと泣き始めた。それに不快そうに目を細め、研究者はぱっと手を放す。それにアマーレがほっとしたのも束の間、その薄い腹部に研究者の足先が勢いよく食い込み、小さい身体がその勢いのまま壁に叩きつけられる。
     慌てて駆け寄り、心配そうにアマーレを支えるネルシアと、そんな二人に近寄ろうとする研究者。ルチーゾはその間に立ち、今度こそ研究者を睨みつけた。

    「あ?」
    「……」
    「何だよ、生意気な顔しやがって」
    「俺が……俺は、何されてもいい。だからどうか、二人には何もしないでくれ」

     研究者は片眉を跳ね上げてルチーゾを見る。ルチーゾは服を握りしめながら、必死に研究者を見つめた。それを見下ろしながら、ふ、と研究者は笑う。聞き届けてもらえたのかとルチーゾは目を輝かせたが、がんと脚を蹴られて体勢を崩しその場に座り込んだ。

    「頼むときの態度ってもんがなってねえなあ。敬語使えよ。体勢も相応しいものがあるだろ?」
    「……」

     ルチーゾはぎり、と唇を噛むが頭を垂れて地面に跪き、唇を震わせながら慎重に言葉を口にする。

    「……俺はどうなってもいいです。どうぞ好きに使ってください。死んでもいいです。だからどうか二人のことは見逃してください」

     面白そうにそれを見下ろし、がんと脚で頭を踏みつけながらその男は首を傾げた。

    「ああ、その殊勝な態度に免じて考えてやるよ。ついてきな」

     ぐりぐりと数度足を動かして、それからルチーゾの腕を掴むと引き起こす。ふらつくルチーゾにも構わず、大股で研究者は部屋を去ろうとした。思わず呼び留めようとしたアマーレをネルシアが止める。こちらを最後に見ようとしたルチーゾの前で扉が閉まった。部屋が静まり返る。やがてアマーレの啜り泣きが聞こえてきた。

    「……アマーレ、聞いて」

     ネルシアの紫の瞳がアマーレのことを見つめる。すん、と鼻を鳴らしながらアマーレはネルシアを見つめ返した。

    「ここから出よう。私とアマーレで、二人を助けてここから出て行こう」
    「……どうやって?」
    「私とアマーレの魔法、組み合わせれば幻覚が起こせるから、それを使いながら……。ここから出たら急いで炎のお父様のとこに行こう、そしたらきっと助けてもらえるから」

     ネルシアの手が震えている。アマーレはそれに気が付きながら、もう一度鼻を啜り、大きく首を縦に振った。
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