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    CitrusCat0602

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    CitrusCat0602

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    三竜の話の続き
    ぐろい

     走る、走る、走る。いつ風の始祖に捕縛されるかわからないのだ、アマーレとネルシアは懸命にチコーニャとルチーゾのいる部屋を探した。幸いルチーゾのいる部屋は先ほど研究者が入ってきたときに部屋番号を口にしていたのでわかっている。ネルシアは後ろの様子を見た。曲がり角を曲がり続けたおかげで姿は見えないが、後ろから研究者の怒号が聞こえる。近くの部屋から別の研究者が出てきて、目の前を走り去る二人に驚き咄嗟に手を伸ばした。ネルシアは振り向き、大きく口を開く。それと同時に氷の礫が空中に浮かび、追手に襲い掛かった。しかし幼体の、それも枷付きの魔術などたかが知れていて、後ろから元々追って来ていた研究者がネルシアの腕を掴み床に組伏せる。

    「ネルシア、」
    「アマーレ!走って!」

     思わず足を止めかけたアマーレに、ネルシアがぴしゃりとそう叫んだ。ネルシアが尚もアマーレを追いかけようとする研究者の足を凍らせて妨害するのが見える。アマーレはネルシアに背を向けまた走り出した。
     必死に走り、横目で過ぎ去る部屋のプレートの番号を確認する。そして漸くルチーゾのいるはずの部屋を見つけると足を止め、扉を開こうとした。鍵がかかっているだろうと予想していたのに、何故だかすっと扉が開く。

    「……え」

     アマーレは立ち尽くした。そこにあったのは手術台と、それの近くにあるルチーゾの頭、腕、足……。箱のような物に詰められたそれはまるで組み立てられる前の人形のようで――
     アマーレは後ろから突き飛ばされてべしゃりと床に倒れ込む。

    「全部聞こえてたんだよ。お前らが何計画してたのかも、誰を探していたのかも」

     ぐ、と背中に足をかけられる感覚があった。アマーレはルチーゾの頭を見ている。

    「おかしいと思わなかったか?こんなにすんなり逃げられて。あの雌竜の部屋の話なんか一回もしたことなかったのに、このガキの部屋の話をしてたことも……ぜーんぶお前たちの為だぜ、よかったなぁ?」
    「……」
    「鍵を先に開けといてやったが、どうだ?くく、お友達に会えて嬉しいだろ?」

     翼に手がかかるのを感じた。アマーレの目に涙が溜まる。

    「ルチ、」

     ぶちぶちぶち、と音がした。背中が燃えるように熱い。

    「あ、あとお前の友達の水の竜は先に絞めたんだがな。やっぱり魚とかみたいにうまくはいかないな?」

     首の後ろに何かが刺される。何かを研究者が言っているようだが、アマーレはうまく言葉として理解できない。

    「脱走したんだ、もう始祖様もお前たちを守ってはくれないだろうよ。……ああ、もう聞こえてねえか。」

     ふっと目の前が暗くなる。何も見えない、何も聞こえない。アマーレは誰に言うでもなくただごめんなさい、と呟いた。


    **


     次に目を覚ました時、そこは病院のような場所だった。知らない匂い、知らない人、それから一番会いたかった彼女の匂い。アマーレは首を動かした。両隣りにネルシアとルチーゾがすよすよと寝息を立てている。ああ、あれは夢だったんだと寝ぼけ眼で安堵した。チコ姉が助けてくれたんだ、と思いながら、またアマーレは眠くなってくるのを感じて目を閉じる。次に目を覚ましたら、きっと楽しいことが沢山あるはずだと、そう思った。
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