生き地獄をご提供例えば見逃せないSOS
誰かが助けを求めれば必ずや助けにくる。
それがヒーロー
それこそがヒーロー
だいたいそんな印象を漫画だとかアニメだとか、そもそものヒーローだとかが市民に植え付けた。
だからヒーローはそれに応えないといけないし
ヒーロー自身だってそれを疑問になんて思ってない。
緊急警報が平和を壊す
逃げ惑う民衆の安全を確保して
自分は危険な方向へと向かう
そんなような当然。
ま、俺の知ったこっちゃねェけど
そもそも"オレ"はヒーローなんざにはいっさい興味ない
馬鹿らしいとすら思ってる
一方で"俺"の身体はヒーローだ。
だから危険なんて顧みたらいけない
どうにもならない状況に怯むことなく
平和を守らねばならない
ならば逆に考えよう
もしも永遠の平和が訪れたなら
ヒーローは必要なのか
その答えは…
口にするのは怖い
助けを求める人がいなくなったら
単純明快
ヒーローは要らない
悪の心が消えた時
それが全て白になるなら黒で濁す必要もない
だからテレビの電源に指を乗せて
強く
ボタンを押そうとした。
監獄のモニターは身体に悪そうな光を発したまま
それすら叶わなかった
『これ以上俺に何を望むんだよ!!』
かつて貶され苦しんだのに愛した全ては残す
ゴミを捨てられないバカは黙ってろ
「僕はジェットに消えてなんて頼んでない」
『お前は二重人格でいる今を異常だって言うんだろ?間違いねぇよ考えるまでもない。たしかに異常だ、狂ってやがる。それを正常化するには片方が消えればいい、それこそが…グレイが望んだ結末じゃねェか。』
監獄に囚人はいない
制圧された感情は監守に変わり誰もお前に逆らえない。
もはや死刑を待つのみ
ヒーローは人助けっていう偽善の罪で満場一致で死刑だ
生まれたその日から知っていた
断頭台に立つ日がくることを
それが人殺しによる本当の死刑か
はたまたクビにされた殺人鬼が自殺するか
用済みの口止めか
そういう違いだけ。
首についた即死電気ショックのスイッチが
体内に仕込まれたチップが
発信機が
全部一人の手の中に繋がってた
『用済みだろ?俺をお前の中に残す意味がない。』
「用済みなんて…なんでジェットは僕を護ろうとするくせに自分のことは護らないの…?」
頭のできは良いはずなのに
アイツは相当のバカだ
喜べば良い
これで正常。一般人になれるのだと。
『お前、今俺に言ってることが矛盾してることに気づいてるよな?お前は二重人格は変だって思ってるんだろ?なのに俺が消えるのには反対?何?まさかグレイの方が死ぬつもりかァ?』
それとも…
『観賞用ドールに変えてショーウィンドウにでも飾るのか』
それじゃぁ本当にヒーローのフィギュアだ
グレイの口は紡ぐんだろうか
『ジェットは僕のヒーロー"だった"よ』と
それならまだマシな方か…
死ぬことすら許されない監獄で
喉を掻っ切ったって死にゃぁしなかった。
消えたくないはずなのに
グレイだって異常を正常に変えたい割に
本心で俺に消えてほしいなんて思ってない
そう分かってる
でも、だからこそ矛盾してる
俺が…オマエの中に居る価値って…
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