もっちとUFO UFOに連れ去られたゴクリンのもっちが戻ってきた。
彼の様子にこれといった変化はなく、身体を実験に利用されたり、頭に謎のチップを埋め込まれた形跡もなかった。黄色い触覚もしおれることなく元気に伸びている。少なくとも、怖い思いはしなかったようだ。
「もっち、UFOのなかでなにがあったの?」
わたしの問いに、もっちは返事をする代わりに「ぶっ」とおならをした。これは楽しいときのおならだ。
それからもっちは陽気に踊り出した。連れ去られているあいだの出来事を思い出しているらしい。
宇宙人が──UFOに乗っていたのが必ずしも宇宙人とは限らないが──いぶくろポケモンを拉致した理由は図りかねるが、もっちの表情から丁重に扱ってくれていたことがわかり、わたしは安堵した。
思えば、今までもっちとは一日以上離れたことがなかった。幼いもっちのそばに、常にわたしがついているのは当然だと思っていた。ゴクリンはポケモンのなかでは弱いほうだし、人間の庇護がなければどうなってしまうかわからない。だからわたしは彼が帰ってくるまで気が気でなかった。
だが、彼も日々成長しているのだ。わたしがいないところでUFOの乗組員と楽しくやっていたと思うと嫉妬も覚えるが、もっちが楽しかったのならそれでいい。