【岩男3】宇宙渡航前夜の話【針磁石】 深夜。
日中は人間もロボットも入り混じって忙しく働いていた作業現場は、いまは闇の中で静まり返っている。
格納庫の中心に物言わず佇むのは上半身のみの巨大なロボットで、周囲には作業用の足場が高く組まれている。
キャットウォークの上を照らす数個のライトが、そこに二体のロボットの輪郭を浮き上がらせていた。
「いよいよ明日だな」
「…………」
赤と青のロボット達は、足場の上から巨大なロボットの頭部を見下ろしながらE缶を啜っている。
もっとも、青い方は手に持っているE缶にまったく口を付けていなかったし、しゃべっているのも赤い方だけだった。
「……いいひとたち、だったよなぁ」
「…………」
「博士も、ロックマンも他のライトナンバーズたちも。みーんな気がよくて、優しくて」
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