天下五剣しか顕現できない本丸で花を飾るようにソを自室で存在させる典の話「なぁ、あんたはどこに堕ちたい?」
にこ、と目尻だけ下げてソハヤが笑う。自室の、部屋の中で強く焚かれた香は痛覚を鈍られせ、思考を遮り、堕落されるものだ。胴当ても足鎧も、ジャケットまで部屋の隅に追いやられていた。ソハヤはもう何年も戦に出ていない。この本丸では天下五剣以外の出陣は禁止されていた。いや、正しくは天下五剣以外の顕現が禁止されていた。それでもこうやってソハヤが人間体でいるのは大典太の褒美の一つであった。
自室でのみ、生きることを許されている。最初はひどく抵抗したソハヤだったが、自室を出れば審神者に刀解されてしまうので、渋々腱を切って自室に縫いとめていた。手入れをしない足は毎日酷く痛むらしく、彼のために大典太は香を強く焚いていた。
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