足の爪を切る姿は色っぽい ぱちん。 ぱちん。
不規則なリズムで小さな音が鳴る。大きな体を丸くして、やはり大きな手で以て足先の小さな爪を整えているのだ。
鋼であった時分には髪や爪が伸びる、という感覚は無かったが、人の身というのはこまめな調整が必要であり些か不便でもある。しかしまあ、刀身の手入れと同じようなものか。
ぱち、ぱちん。
狙いが外れたのか、今度は音の間隔が狭かった。新聞紙を広げた上に座り込み、燦々と差す日の中で真下を覗き込む姿はくたりと頭を垂れる向日葵のようにも見える。
弧を描く背中には骨に沿った溝がまっすぐに一本通っており、ぴたりと身体の線が出るTシャツ越しにも存在が分かりやすい。わずかに身体が動く度に表情の変わる背中を何とはなしに眺めていると、むくむくと悪戯心が湧いてくる。
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